2024年の不動産マーケットを西村明彦さんに聞きました!

目次

今はバブルなのか?

吉松 2020年の6月に私と西村さんとで対談した記事について、西村さんの予測が当たっていると評判です。それで2024年の不動産マーケットについてもぜひ語っていただければと思っています。

西村 2020年6月の対談は、最初の緊急事態宣言が解除された直後でしたね。

吉松 いきなりの質問になりますが、都心部では坪2000万、3000万円をつけるマンションが続出しています。このような状況をどう見ておられますか。これはバブルなんでしょうか。

西村 昭和のバブルよりバブルだと実感しています。都心6区マンションに限ればまだ上昇の余地があるみたいですよ。株価的にもまだ上がありそうです。

吉松 昭和のバブルよりバブルだと思う理由はなんでしょうか?

西村 カフェで若い連中の話しを耳にすると不動産と資産運用の話しばかりです。旧バブルの主役は40歳前後のおじさん連中でしたが、現在のバブルは20代、30代がマーケットの形成を引っ張っていこうとしています。例えば不動産投資クラウドファウンディングで一口一万円から投資可能のファンドがあります。数十億円集めるのに数時間かかりません。私から見ると、配当利回りが低く、危なっかしい不動産もありますが、そこに若者マネーが吸い寄せられています。

吉松 なるほど。YouTubeやオンラインセミナーなどで、昭和の頃と違い簡単に不動産投資や資産運用の情報を集められるようになりました。デジタルネイティブの世代ほど、不動産投資が身近になっているかもしれませんね。ただ、知識が増えただけやれるほど甘くないのも不動産の世界です。

西村 大手企業以外では人手不足で若者の年収が中高年の年収を超えているとも聞きます。人手不足とコロナ後の金余りが不動産に向かっている、この状況からして、私はバブルと考えますね。

吉松 そうした若者マネーもあるでしょうが、都心部の急激な不動産価格高騰をもたらした中心的な存在や富裕層や投資家だと思います。コロナで旅行や交際費等に関わっていたお金が株式や不動産に流入し、株価や不動産価格の上昇で資産インフレがおこり、富める人がさらに富むという状況になっています。

西村 私は分譲マンションの購入主体はあくまでパワーカップルだと思っています。そこに転売ヤー、株成金、相続税対策富裕層が追従した感じじゃないですかね。とはいえ、この水準まで上がってきたらかなり目利きが必要になりますから参戦者は減ります。凄いのは中国人でマンション購入者の2割から3割を占めています。しかも在日の中国人カップルが普通に日本のメガバンクから住宅ローンを借りています。日本のパワーカップルより稼いでいるんでしょうね。

購入者の2割は中国人

吉松 確か、東京都中央区のマンション購入の2割は、中国人だと言われていましたね。彼らの稼ぐ力はすごいです。中国人の主婦兼YouTuberで戸建て民泊を経営している人を知っていますが、1戸で年間2000万くらいは普通に稼ぐそうですね。浅草や上野などの近くの1戸建てで、住宅ローンで買っていると聞きます。

西村 都心不動産購入者の大半は自宅、セカンドハウスで活用、富裕層は利回りを狙った賃貸事業、中国人は自宅、別荘、投資を目的にしています。

うちはラッキーなことに晴海フラッグが抽選で当たったので自社オフィスにする予定なんです。購入坪単価は384万円。東京区分マンションの絶対的王様から坪800万円で転売出来ると言われてビックリしました。

吉松 晴海フラッグは引き渡し前に倍額になったわけですね!47階の3LDKは443倍の倍率になっていると聞きましたが、抽選が当たり、さらにそれだけの値上がりが見込めたら宝くじが当たったようなものです。富裕層、中国人のマンション買い意欲は、24年も衰え知らず、でしょうか?

西村 買うと思います。金利が上がったくらいではビクともしません。富裕層にとっての相続税対策は余命の最重要課題です。市井の人には理解しがたいですが、彼らにとっては命がけの大イベントです。だからまだまだ買います。相場が下がっても買います。中国人はお国の事情で資産を突然に無くすリスクが付きまといます。だから東京の都心不動産まっしぐらです。

吉松 中国という国の、お国事情もありますか。

西村 中国人は国家主席を地球上の人間でないくらい絶対手が届かない存在だと認識しています。だから日本に来てテレビをつけると国民が総理大臣の悪口を平気で言うことに凄く新鮮味を感じるらしいですよ。日本は落ち着く、要するに日本は人間が皆平等で住んでいて安心するのだと思います。円安が続けば中国人を主体とする外国人が下支えするインバウンド投資は続くとみてよいでしょう。

吉松 金利が上がっても外国人の需要が見込めるということですね。

西村 波乱があるとしたら中国不動産バブル崩壊の影響で、損した穴を埋めるために含み益がある日本のマンションを売ってくるケースが想定できます。

吉松 それは盲点でした。仮にそのシナリオが現実に起きた場合は東京都心の一部のマンションでは、2割~3割の部屋に影響する可能性もありますね。東京オリンピックの時、晴海や豊洲のタワーマンションのベランダや窓に、中国国旗が多数出ているのを見ました。おそらく応援の意味だと思ったのですが、タワマンの結構な割合の部屋に掲げられていたので驚きました。

西村 チャイナショックで下がれば絶好の買い場になりますから、日本人にとってはウェルカムかもしれません。

窓に見られる中国国旗

吉松 香港や台湾籍の投資家の最近の動きはいかがですか。

西村 噂通り、母国から逃げたいと考えている方は多いと聞きます。東京に住まいや拠点が欲しいでしょうね。一方で香港在住の知り合いによれば、政治が中国化した以外は以前と変わらないといいます。台湾の財閥、企業家などは大陸との交易なしには成り立たないから併合されるのには反対していないという声も確かみたいです。台湾の人口や財力←から考えると、日本の不動産に与えるインパクトは低いでしょう。

金利はどうなる!?

吉松 話題変えます、米国が金利を下げる方向に向かいそうです。日本の政策金利、民間の金利はどうなりますか?

西村 日銀が言うように少し上がりますよね。マーケットは折り込み済であまり波乱が起きない感じです。銀行の貸出しの利ざやが増えるのは日本経済にとってはプラスだと思います。

吉松 しかし国債の利払い増えるので国家財政が心配になります

西村 税収が異常に増えているから、利払いが数兆円増える程度なら議論にならなくなりました。数年前に30兆円台の税収が昨年は70兆円台に増え、この勢いだと80兆円台も視界に入るんじゃないですか?最近久々に国税の調査入りましたが税務署は気合い入ってましたよ。コロナ禍で調査出来なかった分を取り返しにきてる感じ、苦笑

吉松 税務調査ですか。怖いですね。

西村 以前は納税が少し遅れても遅延損害金の請求はきませんでしたが、昨期は国税、都税からしっかり請求書きましたよ。二日分、笑

吉松 最近、元税務調査官だったという方と話をしましたが、不動産所有者は税務調査対象のトップ3に入っていると言われていました。

ファミリー物件は品薄状態

西村 ところで全国的な貸家の入居率とか着工数とかトレンド教えてください。

吉松 都心部、関西圏の中心部では家賃は上がっています。最近では、光熱費の上昇から、「共益費・管理費」の値上げをしている大家さんもいると聞きました。

出典:アットホーム株式会社

西村 個人の大家さんだとそういう対策もしているのですね。国内最大住宅リートの人から聞いたのですが都内はファミリー貸家が少なくなり、単身者マンションの貸坪単価を超えてもすぐに埋まる地域があるみたいです。だから今後は単身者供給やめてファミリー供給に絞り込むと言われていました。

吉松 分譲マンションが上がりすぎて、買えないでいるファミリー層の存在により、ファミリー物件は品薄が続いているというのは確かに聞いています。先日、アットホームの方から聞きました。外国人のエグゼクティブ層の需要、また、数としては多くないにしても、室内の「映え感」を気にするYouTuberのような方々が都心部の高級マンションを賃貸で借りている、という話も聞きました。一般的に家賃は、分譲マンションの販売価格に遅行すると言われるので、賃貸住宅の家賃はあと数ヶ月は上昇が続くと思われます。

西村さんが以前から得意とされている、ホテルやオフィスの投資環境はいかがですか?

西村 ホテル、旅館はインバウンドで空前の繁盛です。しかしリベンジ消費と円安インバウンド需要に支えられているだけで長続きするかは疑問が残ります。オフィスは米国と比べて戻りが早かったです。日本人はやはり群れて仕事する方が楽なんですね。男性は家にいると家族から嫌がられますし。需要のない古い小さなビルは賃貸マンションかコインパーキングに変わっていくでしょう

吉松 先日、ニューヨークの投資用不動産を販売している方と会いましたが、ニューヨークはテレワークの影響でオフィスの空室が目立った結果、住居へコンバージョンするケースが増えているそうです。写真や資料を見せてもらった物件も、築93年で元は銀行だったというビルでした。それが550戸を超える賃貸住宅になっています。価格は日本円で2億円くらい。地下鉄直結という超好立地です。築93年なので元の配管は全て潰して、天井、床下に新しい配管を敷設したそうです。元がオフィスでそもそも天井高があるからこそできることですね。こうしたコンバージョンのノウハウが現地では積まれてきているという話でした。環境が変わってもフレキシブルに対応しているいい事例だと思いました。

ニューヨークの建物(イメージ)

吉松 最後になりますが、来年は何に投資したら良いですか?

賃料を上げられるか?

西村 日本株が良さそうです。1989年の史上最高値は更新しそうな勢いです。個別銘柄でなく日経平均指数に連動するものが良いです。実は金地金を保有していますが価格とドルのダブル高でかなり含みが出来ました。今後急な円高に反転すると海外価格が上がっても国内金価格は下がるので少し注意が必要です。不動産は本格的に賃料の上昇が始まるかにかかっています。日本の鑑定方法は収益還元法だから価格は賃料に左右されます。

吉松 これだけあらゆる物価が上がっていますから、賃料も上げていきたいところ。当然所有者は、それに見合おう努力をする必要がありますが。

西村 最後に目から鱗の話しします。賃料横ばいは理論的にはイコール賃上げなんです

吉松 というのは?

西村 建物は毎年減価償却します。例えば鉄筋コンクリートであれば年間2%償却します。仮に賃料が10万円の部屋を借りているとします、不動産の比率が土地、建物同額ならば一年後に賃料の1%に相当する0.1万円は下落と見なされます。

吉松 なるほど、実際の賃料が据え置きされても理屈上は9.9万円になっているから、実質は値上げされているということですね。まるで「不動産版ステルス値上げ」ですね。

西村 うまい表現ですね、笑。政府は建物を減価などして消費者物価指数(CPI)を算出するので土地価格が上がらないと住宅賃料物価には下方バイアスがかかります。実際の市場でも近隣相場やCPI(消費者物価指数)を参考に更新賃料が決まるため賃料も上がりにくくなってしまうわけで、悪循環なんです。

吉松 政府の家賃に関する消費者物価指数の集計方法が保守的過ぎて結果市場の家賃に影響が出て、住宅賃料デフレになっているという理解でよいですか?

西村 その通りです。

吉松 しかし、いち入居者としては、家賃の値上げは厳しい・・・。

西村 頑張って、給料を上げていくしかありませんね!

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次