9月9日、東京・北区にあるイベントスペース「しかのいえ」にて、不動産後見アドバイザー青木 信男さん主催のワークショップが開催されました。弁護士の濱川 俊先生、行政書士の塗木 薫先生をスピーカーにお迎えし、座談会形式で遺言書の基礎知識と実際の書き方について学ぶことができました。
スピーカー
弁護士 濱川 俊
濱川法律事務所代表。弁護士(第一東京弁護士会所属)。北区赤羽の地で開業後、10年以上の間、遺言・相続問題、不動産問題、労働問題などに取り組む。
行政書士
塗木 薫
すずめ行政書士事務所代表。身近な存在としてお客様のサポートができるよう「すずめ」を事務所名に掲げ開業。争わない「和」を理念に終活サポート中。ミクロモザイク作家・講師。
不動産後見アドバイザー
司会 青木 信男
一般社団法人みんな元気に代表理事。一級建築士・宅建士・不動産後見アドバイザー・相続診断士。母の認知症発症で介護離職を経験したことを機に、高齢者のサポートを目的として起業。
なぜ遺言書が必要なのか
「まずは、財産を受け取れる『法定相続人』が誰にあたるか理解しておきましょう」と行政書士の塗木さん。「サザエさん」の家系図を使って解説していきます。
堅いテーマながら、会場は和やかな雰囲気です。
「自分が波平の立場と仮定して、第一相続人は配偶者と子供ですから、波平の場合は妻のフネ、その子供であるサザエ、カツオ、ワカメが該当します」
遺産が2000万円だった場合、フネの取り分は1000万。その半分の1000万を3人の子供が分配すると333万円ずつになります。残りの1万円をどう分けるか判断する際などで家族間の争いを防ぐために、遺言書が有効になるのです。
遺言書には3つの種類がある
自分にとっての相続人は誰になるのか。また、持っている財産や負債はどれだけあるのか。遺言書を書くためには、これらを把握しておかなければなりません。
参加者に配られた「人生の棚卸しノート」とプリントに、それぞれ情報を書き込んでいきます。
次に、遺言書を書いていきます。
記載にあたって「3つの書き方がある」と青木さん。
- 自筆証書遺言
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遺言者自身が本文・日付・氏名を自書し、押印することにより作成する遺言書
- 秘密証書遺言
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遺言者自身が作成、封をした遺言書を、公証人及び証人2名の前に提出することで、内容は秘密にしながら、存在自体は明らかにしておく遺言書
- 公正証書遺言
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証人2名の立会いのもとで、公証人が遺言者から聞き取った内容をもって作成する遺言書
今回は自筆証書遺言の書き方を習いましたが、可能であれば公正証書遺言の形で遺しておくのが望ましいと濱川さんは言います。
「3種類とも記載ルールに誤りがなければ有効ですが、自筆証書遺言と秘密証書遺言は自分で保管しておく必要があり、紛失のおそれがあります。くわえて自分で記載するため、厳格な記載ルールを守らなければならずハードルが高い。作成の手数料はかかるものの、内容の偽造や変造が起きにくいこともあり、公正証書遺言の形をおすすめしています」
大切な人を守るために、正しい知識を身につけよう
日本では、入籍しているかどうか、血縁関係があるかどうかで基本的な相続権が決定します。そのため「生前お世話になった」など、間柄を加味して財産を遺したい場合には遺言書に記載しておく必要があるのです。
分かりやすく説明してくれるだけでなく、気になったことや馴染みのない用語に関して質問しやすい雰囲気で進行した今回のワークショップ。親や自分が遺言を書くと想定しながら、実際に書いてみることで、普段なかなか学ぶ機会のない知識を深めることができました。
ここでしか聞けない介護・相続・家のこと連続座談会。第4回は臨床心理士の浅見大紀さんをスピーカーとしてお招きし「目からうろこの認知症予防」というテーマで開催予定です。自分や家族を守るために今からできることを学べる会となりますので、ぜひお越しください。
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