第31回 不動産女性塾 新春セミナー「人生をデザインする魔法」リポート

1月26日、明治記念館で第31回不動産女性塾が開催されました。全国的に大寒波がニュースになった日でしたが、令和5年最初の同塾イベントに、80名の参加者が全国各地から集いました。
北澤艶子塾長のあいさつのあと登壇したのは、株式会社ドムスデザイン代表取締役の戸倉蓉子さんでした。

肩書きを拝見すると、一級建築士、看護師、イタリア政府認定デザイナー、宅地建物取引士、と3つの国家資格が並び、「どういうこと?」とクエスチョンマークがいくつも頭をかすめます。お話を聞きながら少しずつ、その理由がわかってきました。同時に、戸倉さんの挑戦と諦めない半生を知ることになりました。

目次

ナイチンゲール伝記を読んで

看護師になろうと思ったのは小学生のときだったそうです。ナイチンゲールの伝記を読んだのがきっかけでした。クリミア戦争(1853年~56年)で活躍し、白衣の天使として知られるナイチンゲールですが、看護師であり建築家でもあったそうです。当時の病院は、かなり劣悪な環境で、それを改善するため、ナイチンゲールは寄附を募るなどして環境を整えていったそうで、そうした活動は戸倉さんの心に深く刻まれます。

看護学校を卒業したのち、慶應義塾大学病院で看護師として勤務します。人を助けることができる、意気揚々と職につきますが、目の前では多くの人が亡くなっていきます。助けるすべを持たない自分に、大きな無力感を覚えたそうです。加えて、病院の無機質で暗い建物の中で毎日働くことに、一層気持ちが落ち込んでいくのを感じました。

「これではいけない」そう思っていたとき、たまたま読み返したのがナイチンゲールが書いた『看護覚え書』でした。
そこには「回復に必要なものは環境である」とあり、その要素として「①陽光、②換気、③暖かさ、④清潔、⑤静けさ」が挙げられていました。
「これこそまさに、今の病院に絶対必要なことだ」。戸倉さんは確信しました。

「明日に向かって生きる希望」こそが回復の力

小児病棟にいた戸倉さんは、白血病で入院し闘病していた少女が、一度も笑わないことが気になっていました。なんとか元気になってほしいと思い、少女が好きだと言っていたガーベラの花を病室に飾ります。すると初めて「看護師さんありがとう」と笑顔を見せてくれたそうです。そればかりか、その後の検査の数値がどんどんよくなっていきました。この時、戸倉さんは、患者さんの回復に大切なのは、「明日に向かって生きる希望」だと痛感しました。

それ以降、戸倉さんは、患者さんには、ガーベラのような、優しいもの、癒されるものが必要だと考えます。そして、「小児病棟をもっと明るくしませんか」、「緑を入れましょう」、「落書きができる廊下にしませんか」、などと提案しましたが、当然、新人看護師の提案が受け入れられるはずもありません。すべて却下されてしまったそうです。
 
こうした経験の中で戸倉さんは、「自分が建築家になり、病院を変えよう」と決意します。そしてなんと、約3年勤めた病院を辞めてしまいました。しかしそこからの道のりは険しく、設計事務所に面接に行っても、「勉強してから来てください」などと断られること約50社。自分には何の価値もないのかと落ち込んでいる中、あるリフォーム業者に拾われます。

「月収100万円も夢じゃない」
「インテリアコーディネーターになれる」

などの甘い誘い文句は、フルコミッションの営業会社だからでした。
自分で営業し、現場監督をし、集金をして、そこから歩合をもらう。すべて未経験からの挑戦でしたが、結果、建設業界について一から教えてもらうことができ、営業も覚え、経験を積み、メジャーさえ使えなかった状態から、最終的にはマンションのデザインも任されるまでになったのです。そこで3年間、修業しました。

ミラノへの留学を決意

35歳のとき、女性向け賃貸マンションのデザインを任され作業をしていると、石の貼り方など、本場のヨーロッパでは本当はどんなやり方をするのか、などの疑問がむくむくと湧いてきます。
「本当のことが知りたい!」。
いてもたってもいられなくなった戸倉さんは、驚くことにイタリア・ミラノへの留学を決めたそうです。

イタリア語は留学を決めてから習い始めたそうです。とにかく、その行動力たるや、驚くほかありません。建築家パオロ・ナーバ氏に師事し、2年間イタリアで学ぶと同時に、街や友人宅からも、暮らしを楽しむことや、色へのこだわりなどたくさんのことを学ばれたそうです。

「アメリカ人が家をきれいにするのは資産価値を上げるためだけど、イタリア人が家をきれいにするのは、日常を家で楽しむため。そういった、楽しむことや美意識の土壌が子どものころから身についているんですね」(戸倉さん)
 
帰国後、2000年に女性だけの一級建築事務所を立ち上げます。2005年に竣工した賃貸マンションは、イタリアの街並みを思わせるようなつくりにし、中庭ではコンサートもできる、入居者が楽しめるデザインにしました。新築から18年経った今でも、家賃は相場の1.5倍。一度居住した入居者は、長く住み続けています。

クリニックのデザインを依頼された時は、テーマパークのような、病院らしからぬ病院を、という要望だったので、「街歩き」をテーマに、長い廊下も楽しめるように通り(廊下)に一つひとつ名前をつけたり、カフェやレストランもつくりました。人間ドックの宿泊室は「世界を旅する」をコンセプトに、モナコ、ミラノ、ニューヨークなど19の都市をモチーフにデザインし、部屋選びを楽しめるようにしました。オープン時には2,500人が見学に訪れたそうです。

このようにデザインの力が、メンタルや回復力、日々の楽しさなど、様々なことに影響するのかと思うと、自分の住まい環境について振り返らざるをえません。

行動で未来は変わる!

戸倉さんは、自身のスタイルに合う色やインテリアが一目でわかる「8星人・スタイルアップシステム」を活用しています。パーソナルイメージコンサルタントの飯野未季さんに「7プラネッツ理論」を学び、それを基に8つのタイプにアレンジしたものです。

ちなみに8つのタイプとは、「モダン」、「ドラマティック」、「クラシック」、「フェミニン」、「ポップ」、「ロマンティック」、「ナチュラル」、「ゴージャス」。好みで選ぶと失敗しがちな色やインテリアも、8星人・スタイルアップシステムを活用すれば、探しやすくなります。また、マーケティングにも活用できます。目の前のお客様が何が好きで、何を必要としているか、大体わかってくると言います。さらにお客様には「なぜ私のことがこんなにわかるの?」と、喜んでただけるのだそうです。
(※「8星人・スタイルアップシステム」について、詳細は戸倉蓉子さんの著書『いい家に抱かれなさい』/発行:日経BPコンサルティング、発売:日経BPマーケティング、をご覧ください。)

戸倉さんは、「始めから決められた人生はなく、行動でしか未来は変わらない。そして両親、先祖に感謝することを忘れずに」という言葉で締めくくりました。

最後は武藤雅子副塾長の「戸倉さんへブラボーの拍手をお願いします」と、旬のワードが入った言葉で閉会となりました。

家が、環境が、人を心身ともに健康にさせる。そこにあるのは、「人に幸せになってほしいという」願い。誰かを幸せにする建築・不動産の仕事っていいな、そんなことを改めて思わせていただく時間でした。

Hello News編集部 柳原幸代

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次