いよいよSF小説が現実に起きる時代になってきた
アメリカの小説家、ニール・スティーヴンスンが1992年に発表した『スノウ・クラッシュ』に、「メタバース」という言葉が世界で初めて登場する。メタバースとは仮想空間上で行うコミュニケーションや経済活動、およびそれらのサービスのことを言い、小説の主人公は、メタバースの中で、現実世界とは異なる自分を演じながら生活を送る。
30年が経った今、新聞やネットニュースなどのメディアでは、こんな見出しが出ている。
- 5億円で売買も、仮想空間「メタバース」の不動産が高額取引のワケ
- 史上初の「メタバース住宅ローン」登場
- メタバースでのビジネスチャンスを理解するための3つのポイント
などなど。
中でも興味深いのは、メタバースの不動産だ。米システム会社「MetaMetrics」によると、年内にも10億ドル市場に成長すると言われている。そもそもメタバース不動産とは、仮想空間上に存在する土地や建物のデータで、現実に存在しない土地や建物のこと。それなのになぜ高額で取引されるかというと、その場所でビジネスが可能だからだろう。
例えば、メタバースで土地を購入し、そこにお店を建てれば、デジタルアートやゲームなどのデータ資産の販売や、商品広告の出稿、音楽データを利用したコンサートを催すこともできる。もしその場所が、多くの人(ユーザー)が行き来する場所、現実世界で言う商店街や駅近のような場所であれば、売上が伸び、より多くの利益を得ることができる。すると、そのお店が建っている不動産の価値が上がり、高額で売買されるようになる、という理屈。もちろん、売買ではなく賃貸することだってできる。
実際、アメリカの不動産投資ファンド、リパブリック・レルムは、2021年12月に約5億円でメタバースの土地を購入した。また、カナダの投資会社、トークンズ・ドット・コムは、約3億円でデジタルデータで作られた商店街を購入した。
暗号資産データサイト「Dapp」によると、昨年12月の初旬には、1億ドル以上のデジタル不動産が販売されたという。
こうした投資としての一面を持つメタバースだが、そのメタバース上に一般のユーザーが増えないことには、何の価値も生まれないという側面がある。そのため、メタバースを提供する企業は、自社のメタバースに多くの人がアクセスしてくれるよう様々な施策を行っている。すでに4000万ユーザーを集めるメタバース「Sand Box」では、有名アメリカ人ラッパーのスヌープ・ドッグが不動産を購入したことを発表し、メタバース上で彼の隣人になることができる権利をオークションした。また、ジャスティン・ビーバーもメタバース上でのライブに出演。多くのイベントを開催することで、アクセス数を増やしているという。
人がより多く集まる場所に価値が生まれる。そしてその場所を売買したり、賃貸したりすることで、不動産が高騰していく。これは、現実の不動産マーケットと何ら変わりはないように感じる。
ユーザーとしてメタバース空間に入る、というのは実際のところ、楽しいものなのだろうか。体験してみないとわからないため、ハローニュース社員の一人が、メタバース「ゼペット」に登録。メタバースの世界を体験した。
メタバースという流れに乗るか反るか、彼女の体験記を通して判断してみてはいかがだろうか。
メタバースで分身を作ってみました
まず、自分の好きな身長、髪型、肌色…を設定し、初登録でもらえる2000コイン(120円で4680コイン購入できる)を使って、衣装を購入。これから自由に作った私のアバターでバーチャル空間にアクセスします。
アクセスするワールド(チャンネルのようなもの)は何がよいかわからなかったので、とりあえずSNOOPYハウスというワールドに入ってみました。
ごく普通のSNOOPYのテーマショップでした。残念ながら、夜9時ぐらいには、お客さんは私一人しかいなかったです。
最初は一階にあったSNOOPYの形をしたカレーライスが食べられ、コーヒーを飲めるレストランに行ってみました。雰囲気はとっても可愛い感じで、SNOOPY形の椅子に座り、ぬいぐるみに囲まれながら楽しい時間を過ごしました。
階段を登ると、2階にはショップがありました。好きな商品のボタンを押すと、アイテムの購入ができます。SNOOPYの衣装をアバターで試着したり、写真を撮ったりしましたが、今回はとりあえず何も買わずに出ました。
眠れない時、夜遅い時間に月見ができるワールドに入ってみたこともあります。そこには、日本の美しい庭園が視界いっぱいに広がっていました。そこで満月を眺められるこのワールドには、いつも遅くまで人々が集まってきます。何も話さずに、ただ部屋の縁側に座って、月を見るだけです。月見ワールドは静かな作りで、瞑想に相応しい音楽がゆっくり流れ、たまに昆虫の声が聞こえてきて、とっても癒されます。
人狼ゲームもやったことがあります。まるでゲームの中の世界に生きているみたいでした。アバターを操作して任務を完遂させるのですが、やはり難しかった…。私みたいにゲームが苦手の人には不向きのワールドです。
また、ここには海外ワールドもたくさんあります。もちろん言語は全て外国語です。韓国語のワールドはよくみかけるので、おそらく韓国人にはメタバース好きな人が多いのかもしれません。
アバターを作って、仮想空間で遊ぶことは、想像以上に楽しいものでした。
時間があれば、毎日でもメタバースに入ってみたいと思った程です。様々なワールドが選べるため、明日はどんなワールドが出てくるのか考えるだけで楽しみになります。万一、気に入らならいワールドに入ってしまったら、何も気にせずそのワールドから出ればいいだけなので、心理的な負担もありません。
それと、自分の好きなワールドに、好きなようにアクセスできるので、複数のワールドで何度も出会うような人は、私と性格がとても似ているんじゃないかと思うんです。気の合う人をメタバース上で探せるんです。メタバースを体験するまでは、仮想空間というのは真実と少し離れた価値観のものだと思っていたのですが、むしろここは、今では真実と近しい存在なのではないかと思っています。
現実では時間や空間でできないことでも、メタバースではアバターを通していろいろなことを実現できます。今後、メタバースで過ごす時間が、リアルのそれを上回る、という人が出てきても驚かないと思ってしまいました。
HelloNews編集部
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