建物から日本のエネルギー問題を考える〜建築物省エネ法〜

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建築物省エネ法の衝撃

9月6日未明に起こった北海道胆振東部地震の影響により、北海道内全域の約295万戸で停電が続いた(段階的に解消され、9月19日現在も一部停電中)。北海道電力では、復旧後も節電を呼びかけている。改めて、日本のエネルギー需給について考えさせられる天災だった。国内における省エネの気運は、東日本大震災を機に高まり、2015年に「建築物省エネ法」が成立に至り、その後段階的に施行されてきた。本コラムでは、エネルギーと建物について考えてみる。

省エネ住宅を義務化

2011年3月11日に起こった東日本大震災をきっかけに「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」、通称、建築物省エネ法が制定された。4年後の2015年のことだった。建物のエネルギー消費量は、産業や運輸など他の業種が減少傾向にある中で、増加傾向にあり、エネルギー消費量全体の3分の1を占めている。まずはこの分野の消費量を減らずため、建物の省エネ対策が必要不可欠との考えから本法律が制定された。

大規模、中規模建物、非住宅、住宅と段階的に施行され、省エネに適合しているかの届け出が必要になってきている。

300㎡未満小規模の住宅は現在、努力義務に止まっている。ただし、例外として「住宅トップランナー制度」があり、年間150戸以上新築する戸建住宅事業主(販売会社)は、住宅の省エネ性能の基準を満たす必要があるとされている。

隙間風を知らない世代

最近では、隙間風や窓の結露を知らない世代が登場している。「住宅性能表示制度」導入後の2000年以降に生まれた子供達でリクルート住まいカンパニーのSUUMO編集長、池本洋一は、「住宅性能体感キッズ」と呼ぶ。「住宅性能表示制度」は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく制度。国が定めた技術基準にしたがって専門家が評価し、住宅性能評価書を発行している。制度以降、性能の高い住宅で育った子供たちが大学生や社会人になり、賃貸住宅の新たな入居者層となっている。このキッズたちがいまある賃貸住宅で生活をするとまず驚くことが「寒い」ということらしい。

住宅性能表示制度や建築物省エネ法に適応したマンションや戸建が一般化したことで、将来の入居者たちの部屋を選ぶ基準は確実に変化すると予想される。今は、「駅近」「築浅」が人気だが、近い将来、「断熱性能が高い」や「ペアガラス」といった条件も出てくるかもしれない。そうなると早い段階で住宅性能体感キッズに対応した賃貸住宅の企画が必要となってくるだろう。

国としては、2020年を一つの基準としている。経済産業省資源エネルギー庁が発表している「第5次エネルギー基本計画」によると、住宅に関しては2020年までに省エネ基準の義務化を検討している。

2020年までに全住宅に対して省エネ基準が義務化された場合、現行基準の物件が将来的には「既存不適格」となる恐れも考えられる。そうなった場合、資産価値が大きく目減りすることにつながりかねない。1981年に改正された建築基準法の新耐震基準と旧耐震基準の違いほどのインパクトがあると指摘する専門家もいるほどだ。

国の方針としても建物のエネルギー消費量が全体の3割占めているため、住宅を含めた建物の省エネ化に向けて動き出している。それに伴い、法律も段階的に制定されている。また新たな賃貸住宅の入居者層が登場し、ニーズも変化してきている。これらの動きは丹念にチェックしていく必要がありそうだ。

Hello News編集部 山口晶子

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