ホストに朗報!民泊保険でトラブル知らず

「旅にトラブルはつきもの」とよく言われるが、これは「民泊」にも同じことが言えそうだ。日々民泊運営に関わっている人々に話を聞くと、大なり小なりのトラブルを経験していると口を揃えるからだ。

川崎市で約20戸の民泊をしているホストは「土足で部屋に入られてしまったようで、貼り替えたばかりの床がめちゃくちゃに汚れてしまった」と話す。

一方、京都の町屋で民泊運営をしているあるホストは「ゲストのゴミの捨て方が原因で、近所のヤクザから因縁をつけられてしまったことがあります。以来、誰も泊まっていないのに物件の前にゴミを置かれる嫌がらせを受けたり、お金を請求されたりするトラブルに発展しました」と苦い経験を語った。

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トラブルはつきもの

前述のようなトラブルに見舞われても、これまではホスト側で対応する以外なかった。例えば、ゲストが客室の備品を壊したまま帰国し、弁償してもらえなければ、ホストは泣き寝入りするしかないのだ。

宿泊施設内のトラブルに対応する「旅館賠償責任保険」に入れば、様々な損害がカバーされるが、加入には旅館業許可を受けた物件であることが条件だ。よって、「民泊」の場合は適用されない。

民泊はここ4、5年の間で広く普及し、その流行を追うような形で昨年に6月にようやく民泊新法が施行された。そんな事情もあり、ホテルに対応した保険はあっても、民泊に対応した保険は存在しなかった。

とはいえ、保険がないまま運営を続けることは、運営規模が大きくなるに従い死活問題になってくる。そのような中、民泊新法の施行を境に状況は変わってきた。保険各社が民泊保険を扱い始めたのだ。

ホストもゲストもカバー

昨年 12月から「民泊賠償責任保険」の販売を開始したのは、損害保険ジャパン日本興亜株式会社(東京都新宿区)だ。賃貸住宅業界の発展を推進する公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(東京都千代田区)と提携し、同協会の会員を対象とした民泊保険となっている。


提供:日本賃貸住宅管理協会「民泊賠償責任保険の商品案内パンフレット」より

同商品の特徴は、民泊運営にかかわる損害賠償の範囲は、住宅宿泊管理業者やホストのみならず、ゲストが負う損害賠償もカバーしている点だ。民泊物件の構造上の欠陥や管理の不備による賠償リスクに加え、ゲストが設備を壊したり、近隣住民へ迷惑をかけたりした際の賠償リスクをまとめて補償する。

例えば、「ゲストが連日騒いだことが原因で近隣住民が騒音による精神疾患を患いホストに責任が発生した」「宿泊施設の管理不備によりゲストがケガをした」「ゲストがお風呂のお湯をあふれさせ、階下の部屋を汚損した」「ゲストが部屋の備品を壊した」といった時に、ホストやゲストに替わって保険会社が賠償責任を負う。

補償内容(事故例)

提供:日本賃貸住宅管理協会「民泊賠償責任保険の商品案内パンフレット」より

保険で泣き寝入りがなくなる

損害保険ジャパン日本興亜株式会社・企画開発部部長の梅村公二郎さんは「ゲストが室内の備品を壊したまま帰国してしまった場合に、日本と海外とで遠隔で損害請求のやり取りをするのは非常に難しく現実的ではありません」と話す。

もし、民泊保険に入っていれば、ゲストの過失であっても、損害を受けたぶんが保険会社から補償される。

保険は、旅館業法、特区民泊、住宅宿泊事業法のいずれかの許可または届け出を得た施設が対象となる。年間保険料※は、住宅宿泊事業法に基づく民泊で、年間宿泊提供日数が180日以内の場合は5500円(年間)、120日以内の場合は3770円(年間)となっている。旅館業法・特区に基づく民泊で提供日数に制限がない場合は7830円(年間)だ。
※物件数が増えれば、翌年からは金額が変更となる可能性がある

保証限度額は1事故1億円までとなっている。対応言語は、英語、中国語、スペイン語などを始め、15カ国語で対応している。

同保険について梅村さんは「保険をかける物件の住所や部屋の面積、築年数の申告は必要ありません。1戸ごとに料金をいただくのでとてもシンプルなのが特徴です」と説明。

手探り状態での商品化

今回、民泊保険を商品化するにあたり、物件の条件ごとにもっと細かく分けて料金設定をすべきという意見が同社内で上がったという。

しかし、条件が細かくなければなるほど、利用者の理解に時間を要し、商品が浸透するスピードも遅くなる。リスクを取ったとしても、あくまで“シンプル”であることにこだわった。

「保険業界は硬いので、今回の保険のように対象物件を特定しないといった詳細条件の申請なしに商品を作るというのは、ハードルの高いものでした。ですが、日管協の会員限定での募集ということもあり、信頼関係を前提に社内の意見を押し切って商品化にこぎつけました」と梅村さんは生みの苦しみを振り返った。

民泊保険市場は、まだ始まったばかりの未成熟な業界だ。だからこそ、保険が業界全体の健全化に一役買うことが期待されている。

Hello News編集部 須藤恵弥子

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