1年の半分を海外で過ごす、旅人大家さんこと村瀬裕治さんが見た「世界の働き方最前線」を聞くインタビューです(インタビュー日:2020年3月22日)。
村瀬さんは、20代の頃、当時不動産業界で売上首位だった大京で、一級建築士として企画設計開発を担当しました。1990年から3年間は、Daikyo Development Pty.Ltdに出向し、オーストラリア・ゴールドゴーストのリゾート開発に携わりました。現在は、国内外に250室の賃貸住宅を持つ投資家として、日本と海外を行き来する日々を送っています。毎年200泊以上をホテルやカプセルホテルなどで過ごし、さらに移動では、陸海空を、LCC、クルーズ船、Uber、テゥクテゥクを駆使し、世界の都市を訪れています。自らの足で世界中の不動産、銀行、ホテル、そして大好きなスターバックスを巡る村瀬さん。その目に映る世界の働き方事情とはどういったものか、聞きました。
── コロナショックによって日本でも在宅ワークが当たり前になってきましたが、業務管理や人事評価の仕方が難しいという声も挙がっています。
私の知る限り、アジアでもヨーロッパでもアメリカでも、ほとんどの国が、日々の業務管理はしていないと思います。上司は、部下が今どこで誰と何をしているのか知らないんじゃないかなあ。求めているのは数字です。なぜならその上司も部下も一年後、同じ会社にいるかはわからないからです。毎朝、朝礼で個々の社員の予定を確認したり、みんなで集合して業務報告会をするというのは、いかにも日本らしい仕組みです。
── 管理しなければ、サボる人も出てきませんか。
サボれば、社内外・上司同僚部下から評価されない。それだけです。数字が評価の基準ですから、余計な出世競争や根回しも、ましてや「忖度」という言葉そのものもありません。本社用の資料を作ることも、社歴や肩書きで態度を変える必要もありません。その分、自分の仕事に没頭でき、数字を上げれば、社内外における自分の評価を高めることができます。
── ということは会社への執着もないわけですね。
私がよく話をする相手は、銀行だったり、投資ファンドだったり、不動産会社だったり、特に成果が数字に現れやすい業種が多いため、そうなのかもしれません。多くが1年契約で、1年間で結果を残す。社歴はあまり関係なくて、ホップ・ステップ・ジャンプで自身のキャリアをアップさせることに努めています。とはいえ、同僚、部下、上司との業務関係、人間関係をうまくしないと、転職の際の自己アピールに重要な推薦状を仲間からもらえませんから、独りよがりで仕事をしているわけでもありません。実際のところは、同じ会社で長く働く方が理想と考えている方が多いと思います。
── 日本は同族・仲間意識が強い方が良い会社と思われます。
海外であってもチームワークはあります。基本は誰もが1年だけの契約。1年しかいないところだからこそ、良い業務、良い関係作りをしようと、協調を心がけています。
大京に入って2カ月目にオーストラリアに出向しましたが、その時の上司は現地子会社のトップでした。まず驚いたのですが、社員6000人(直接間接雇用)の現地のトップと、中学を卒業したての新卒の女性社員が対等に話をしていました。誰もそれを不思議に思わない。当然呼び合う時もファーストネームで、新入女性はTracy、CEOにはSydneyという具合です。役職・年齢・性別をこえて、お互いを尊重し合い、仲間意識もありました。
── よく憂さ晴らしで会社や上司の悪口を言ったりして居酒屋で大盛り上がりしているのは日本人だけとも聞きますね。
なるほど(笑)そういう場はないですね。仕事が終わった後飲みに行くのもほぼないです。オーストラリアでは、金曜日は、16:30から(TGIF/Thank God It’s Friday)ミーティングルームで皆でワイワイぐいぐいワインパーティーというのが恒例でした。
資本主義社会においては企業は当然競争をしますが、会社の中だけの出世競争というのは不思議な感覚です。社長、会長を目指すなら別ですが、現在はGM、CEOの時代。
最近日本で流行っている執行役員、担当部長次長等、肩書きが増えてしまって、どういった役割の方なのかよくわかりません。海外では、個人名が先で、会社名は個人の後ろに存在している、というイメージ。本社様、上司様等肩書きをなくせば、居酒屋悪口会からフレンドリーなワインパーティーに変身できるのに!と思います。それに、毎年毎年クリスマスカードの宛名変更からも解放されますね!
後半では、海外ではどのように「生産性」「成果主義」を高めているのか、聞きます。
後編はこちら
Hello News編集部 吉松こころ
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