3回目の緊急事態宣言を受け緊急対談を開催「不動産はどう動く!?」

西村明彦 さん

1990年大学卒業後、山一證券を経て不動産会社、ファンド会社などで様々な職種を経験。2009年に商業用不動産コンサルティング専業の(株)不動産戦略研究所を創業し現在に至る。プロ間のブローカレッジと相続対策の助言を得意としている。

目次

予測不能状態!!

3回目の緊急事態宣言に突入しましたが、西村さんの住宅・不動産の相場観についてお聞きしたいです。

西村

リーマンショック後のように不良債権が増えて不動産が下がると思っていましたが当てが外れました。近頃は予測不能状態です。私の世代はデフレマインド世代でインフレになる実感が湧きません。

確かに住宅、不動産ともに大変な状況になると思いましたが、実際には、マンション価格は右肩上がりで、高額物件ほど売れているそうですね。先月、森ビルの方から聞いた話ですが、ごく最近仲介したマンションは、坪1300万円だったそうですよ。大和ハウス工業も、3億円の戸建てを商品化するとニュースで出ていました。

西村

黒田総裁様様です。なんといっても超低金利が効いています。あと海外も日本同様住宅インフレが止まりません。ソウルの分譲マンションが東京より高いと知っていましたか。これは衝撃です。

米国ではコロナ禍で郊外住宅販売が絶好調だと聞きました。「アメリカを買おう!」のオープンハウスでも在庫がないという話です。木材が不足してしまい、あおりを受けた日本の住宅メーカーでは「ウッドショック」なんていう言葉も聞かれています。

西村

輸入木材不足は時折起きています。住宅建設に占める木材原価率は全体の10%で、価格に及ぼす影響はさほどのインパクトではありません。逆に住宅メーカーからすると顧客に対しての営業トーク「木材価格上昇するから今建てましょう」に使えますから、カンフル剤的に「ウッドショック」は時々起こるみたいですよ。

とはいえ、実際に、現在建設中の木造戸建ての最終的な価格が変わったり、材料そのものが足りなくなるのではないかと、現場では、その対応に追われているという話を聞きますよ。ビル建設についても、コスト増が止まらないと聞こえてきます。

西村

オリンピック関連需要はほぼなくなりました。しかし建設費は高止まりの様相です。労務費、生コン、鉄のコストが下がりません。

都心ビルが危ない!?

電通やエイベックなど大企業が本社屋を売却しているのがニュースになっています。パソナグループが淡路島に本社を移すというニュースもありました。表面的には住宅・不動産マーケットは下降していくように思えますが今後どのような方向感を持てばよいのでしょう。

西村

エビデンス(証明)の拠り所をどこに置くかです。バブル崩壊当時、住宅・不動産セクターは被害が顕在化するまで2年くらいのラグがありました。私は今のところはこの再来を支持しています。不動産価格は遅行指数です。マーケットは生き物なので予期しないイベントを境に突然不況に入ったりします。

予測しないイベントとは?どんなことが起きそうですか?

西村

都心ビルの空洞化が深刻になりビル稼働率が10%近くになる事や、中小零細企業の破綻が増加して銀行の不良債権が急増する事です。

ビルの空室率は5%以上で不況の入り口と言われますから今がそのくらいです。中小零細企業の破綻予備軍が滞留し、今後倒産していく先が出てくる可能性が指摘されているのに、住宅・不動産がインフレになっているのに怖さを感じます。市ヶ谷のマンションで20年前に1億円で購入した物件が、1億9000万円で売れたという話も聞きました。

西村

株も住宅・不動産も上がっている理由がはっきりしないときが最も上昇します。いまがその時期なのだと考えています。

なるほど。確かに特に明確な根拠ないままに上昇しています。その方がつられて買いたい衝動に駆られます。今家を買わないほうがよいですか?

西村

昔なら「買う時期ではない」と断言していましたが、中国、東南アジアがあれだけ経済発展してお金持ちが増えてその富裕層が東京、福岡、北海道に不動産を買い求めてくるようになるのは全くの予想外でした。コロナ禍後もその意欲に変化なさそうです。

最近、都内でよく見かけるあるホテルチェーンは、タイのブロイラー大手が持ち主だと聞きました。浅草橋や八丁堀、上野などの古いホテルを購入し完全リニューアルして、新築のようにして稼働させています。コロナ禍でホテルや旅館の経営が厳しいところは、海外の資本家にとって絶好の買い時と見らわているようです。そうした案件を専門にデューデリと仲介をしている人を知っていますが、かなり忙しいと言われていました。ところで話は少しかわりますが西村さんの生業はコンサルティング専業ですでに創業12年という事ですが業務内容について教えてください。

バブル紳士の生き残り復活

西村

商売の柱はふたつで財務リストラ支援と地主の相続税対策支援です。非宅建業と謳っているので媒介、開発、管理などの業務はしていません。

コンサルティングを受託する機会はどのようにされていますか?

西村

ほとんど紹介です。意外にも不動産業者からの紹介もあります。

同業からの依頼がある理由はなんでしょう?

西村

関与期間が長くなりコスト倒れになるからだと思います。あと人材不足ですかね。うちの顧客は一番年配者で94歳、次は77歳、75歳という具合です。どんな優秀なコンサルタントでも30代、40代前半ではあまり相手にしてくれません。

最近特に記憶に残る案件はありましたか?

西村

バブル紳士の生き残りがまだいたという驚きです。昭和時代に高値つかみして塩漬けになった不良資産を保有している紳士が2人いました。

それは興味を惹く話題です。

西村

二人の紳士の共通点は折れない心と前向き思考です。恐らく普通の人だったら自殺しているか一家離散でホームレスだったでしょう。眠っていた不良資産の借入残高より最近の不動産時価が上回り超想定外のハッピーエンドを迎えました。私は貸していた銀行からも感謝されました。

株価も不動産もバブル期以降の最高値圏だからこそ起こりえる現象ですね。土地活用とかのコンサルティングの方はいかがですか。

西村

これ面白いのですが地主に男子がいると出来不出来に限らず相続税対策で、ビルやマンションの開発をします。男子がいないと不動産を売却する傾向が高くなります。先ほどのバブル紳士お二人はともに三人娘でした。今お手伝いしている浦和の代々地主の相続人は6名ですが全員女性です。母屋含めて全て売却の予定。以前から関与する中野区の代々地主には男子1人、女子1人ですが先代の土地は小さいの含め全てストロングホールド。札幌の一等地商業地域にビルを保有する素封家(そほうか)には男子2人、女子2人です。当初お会いした時は子孫に美田残さずのスタンスでした。しかし隣接地が手に入る事がわかり逆に領地拡大し、相続税対策しようか迷っているところです。

確かに女性は先祖代々の土地保有にあまりこだわらないかもしれませんね。

西村

その代わり女性は売値に敏感です。コンサルティングは女子を味方に付けないと雇ってもらえません。

その辺りコツはありますか?

西村

嘘をつかない事です。

逆を言えば嘘をつきたくなる場面が多いということでしょうか?

西村

まあ、そうかもしれません。売る場合は買主の戦略を赤裸々に教えてあげる事が大切です。相続税対策で新築する場合にはゼネコンの相見積(2社以上からの工事見積)をきちんと取得して充分な情報提供をする事ですかね。私の場合は疑われるのが当然だと受け止めています。不動産は奥深いから情報格差を埋めてつつ助言行為を進めないと信頼関係が醸成されません。焦らず時間を掛ける事に尽きます。

当然関与する期間は長くなりますね?

西村

一番長い方で7年かけて再開発を支援しました。

報酬はどのように決めるのですか。

西村

依頼者がうちにしてほしいことを要件定義した範囲でコンサルティングをします。業務委託契約を締結してその難易度に応じて報酬を決めさせてもらっています。

源流主義に特化

どんな内容の仕事が多いですか。

西村

秘匿性を高くした不動産売却と保有土地の再開発です。

売却依頼の場合、不動産媒介に当たりませんか。

西村

依頼者はうちを非宅建業者と知って依頼するので媒介者という立場にはなりません。しかし買主を探索する営業実務は宅建業者と何ら変わりません。変わるとすればうちは媒介期間(3か月)より長いタームをコミットメントする事と秘密裏に遂行するところです。

宅建業者との差異がよく理解できませんが?

西村

依頼者からみるとかなり違うのです。宅建業者の営業は会社のノルマに追われ数ヶ月間も決まらないような案件を手掛けられません。また早く成約させるために他業者に物件を拡散します。

西村さんはその隙間をついて本来は宅建業者が手掛ける仕事を持っていってしまうのですね。

西村

うちは源流主義と言って依頼側主権者から委託を受けた不動産以外は取り扱いしていません。依頼者から代理権をもらい宅建業者に買主探索を依頼することもあります。

依頼者にはどんな属性の方が多いですか。

西村

資産管理会社、事業法人、個人地主です。

個人地主からはどんな依頼がありますか。

西村

相続税対策全般の支援です。土地最有効活用方法、節税、借家人、借地人の立ち退きについて相談が多いです。

節税は資産税税理士、立ち退きは弁護士が関与するのではないのですか?

西村

代々の資産家ほど士族と深い付き合いがないのです。立派なので第三者と揉めたりする事もなく暮らしてきたからでしょう。顧問税理士は粛々と決算書の締めと申告書作成を代行するだけで資産家が土地を売買したりするのを面倒がります。報酬は増えず手間がかかるからです。借地人との退去に関する折衝は非弁活動(弁護士以外に依頼不可)になりご法度です。うちは依頼者と考案した戦略に則り士族(税理士、弁護士)を動かす黒子に徹します。

士業の方々を動かす立場になるわけですか。

西村

不動産に関しては多くの場合彼らより私たちの方が詳しいです。そこを依頼者が認知すれば仕事はスムーズに運びます。

人材だけが生命線

今までで思い出深いディール(案件)はどのようなものですか。

西村

北海道の原野100万坪を香港人に売却した事あります。数年後に依頼主がマスコミに追われたりして世間から中国人に国土を売る売国奴みたいな扱いを受けていました。テレビにも取り上げられて困りました。もうひとつはある法人が保有していた数十カ所の太陽光発電所の売却依頼を受けたことがあります。依頼主の倒産リスクを恐れて大手不動産会社も媒介を躊躇していましたが最終的にうちで受託しました。運よく短期間にほぼすべての売電所を売却することが出来ました。そういえば数年前に吉松さんにご紹介受けた案件もありましたね。

超大手不動産会社のグループ再編に関わるそれこそ重要案件でしたね。その会社では調査レポート作成を野村総研、三菱総研などに依頼するはずでしたが不動産については役員会で合意形成を図る為の説得力ある調査レポートを書けるところが見当たらず、コンサルティング会社の紹介依頼があったため、西村さんの会社を推薦させてもらいました。

西村

あれは自信がつきました、改めて感謝申し上げます。

西村さんのビジネスモデルは次世代に継承できますか。

西村

まず宅建業の看板外すことから始めないとなりませんから、そこが第一の壁ですね。従来の不動産ビジネスモデルに頼っていたら徒手空拳のコンサルティングは無理と思います。私はM&A仲介の老舗レコフという企業のビジネスモデルをモチーフにしました。全く成功報酬だけで成り立つ会社です。人材だけが生命線の会社で現社長と専務は知り合いですが、自己に厳しい勉強熱心な方々です。いつかはレコフの様なブランドになるのが目標です。うちのような業態が増えていくことで不動産業界はもっと人々に近い存在になっていくと思います。今回の対談はエンタメ系から少し遠くなってしまい恐縮でした。

コンサルティング業態が成立していることをお伝えできていたら何よりです。今回は価格が上昇している根拠が見当たらない時ほど上昇しやすいと知り大変参考になりました。また次回も目から鱗が落ちそうな話教えてください。宜しくお願い致します。

Hello News編集部

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