中国当局が国内の不動産取引に規制、中国マネーは東京に流れるか?!

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33兆円もの負債を抱える中国不動産大手

中国不動産バブル終焉の火種となるのだろうか。

中国の不動産大手、中国恒大が建設しているマンションの購入希望者に対し、住宅ローンの新規貸付を停止したと、7月21日、ロイターが報じた。

貸付を停止する銀行は、HSBCと中国銀行の香港部門、恒生銀行、それに東亜銀行の4行。対象となるマンションは、中国恒大が香港で建設中の2棟だという。

このニュースに、日本の投資家の間でも激震が走った。

中国恒大は昨年末に、日本円にしておよそ33兆円もの債務を抱えていることが判明し、今年7月には株価が28%下落。新規貸付の停止は、4銀行が同社の倒産リスクを重く見たからだと考えられる。

ちなみに、日本の主要な不動産会社、三菱地所、三井不動産、住友不動産の負債総額を合計しても約9兆円だ。

新型コロナによる金融緩和によって中国では空前の不動産バブルが湧き起こっているが、このニュースが今後の不動産市場に与える影響を考えたい。

忍び寄る倒産の足音

中国恒大は、1996年に創業者の許家印(シュー・ジアイン)氏によって広東省深圳市で設立され、中国本土で不動産開発事業を展開している。

創業から13年後の2009年に、香港証券取引所に上場し、当時の時価総額は72億200万ドル(約7900億円)だった。2017年には許氏が世界の富豪番付で34位に入り、2019年の不動産販売額は6262億人民元(約10兆5688億円)で、国内第3位を記録するなど売り上げを伸ばし続けてきた。

しかし2020年9月、中国メディアが「中国恒大が債務不履行に陥る可能性がある」と報道し、同年11月には内部文書により20年6月時点で債務が約13兆円あったことが判明した。

サッカークラブのスポンサーやテーマパークや病院の開発、ミネラルウォーター販売など、急速な事業の多角化が、投資額を増大させていたようだ。そこに、コロナ禍での不動産開発の遅れが追い討ちをかけた。

この負債を解消するため、昨年9月7日からの1カ月間、すべての物件を3割引で販売し、保有不動産の現金化を図ったが、すでに焼け石に水状態。昨年1月に金利11.5%で20億ドル、さらに香港市場から金利20%で20億ドルを調達していたことで、高金利で受けた融資の資金の返済に当てるのが精一杯だったと考えられる。それでも同社の直近の売上額は、今年1月〜5月で2727億5000万人民元(約4兆6200億円)を記録しているが、「返済に間に合うペースで不動産資産を売却できていない」と投資家からの懸念が強まっている。

もし倒産となれば、社員14万人を抱える巨大企業だけに、どのような倒産の連鎖が起きるのか…。中国国内では、5000兆円規模の金融システムに損害を与え、中国不動産バブルの崩壊となりうる可能性もあるという声も。

中国国内では、鉄鋼工場の作業員から起業し、30年足らずでフォーチュン500企業まで成長させた許氏のことを伝説的な人物として見ているが、彼の功績もむなしく、今年8月17日に辞任となり、後任として趙長竜氏が就任することになった。

許家印氏(1958年生まれ/河南省周口市出身)

中国における不動産購入規制

一方で、中国政府は高騰する不動産市場に規制の網をかけている。

「中国、住宅投機の締め付け」という見出しが、日経新聞に出たのは8月11日のこと。政府が、中古価格に直接介入しようとしていることが記事で明らかになった。

記事をもとに、中国の不動産取引をめぐる最近の規制策をまとめると次の通りだ。

  • 不動産融資と住宅ローンの総量規制を導入
    不動産向け融資と個人向け住宅ローン融資の残高の総融資残高に占める上限比率を決めた。
  • 中古マンションの参考価格を決める
    不動産会社に対し、顧客に参考価格とかけ離れた高額物件を紹介しないよう求める。
  • 住宅購入に資格制を導入
    購入希望者に事前申請を義務づけ、条件を満たした人のみに購入を認める。
  • 2軒目なのに1軒目の購入と見せかける、見かけ上の贈与の規制
    所有マンションを贈与しても5年間は元の持ち主の所有物件とみなすことで不正を防ぐ。

中国当局は、今後3年で不動産価格の高騰による社会の不満を解消するべく、マンション取引の規制を強めていくそうだ。

日本に与える影響は?

日本で複数の不動産を所有するある投資家の男性は、中国のこうした現状をみて、こうコメントした。

「規制によって自国で不動産を買えない中国人投資家たちが次に狙うのは東京の不動産マーケットかもしれません。東京の前に、ジャカルタ、 マニラ、ホーチミンシティ、バンコクの不動産が上がるでしょうから、先行指標として見ています。行き場のない華僑、華人資金が世界中の不動産に目を光らせていると考えていいでしょうね」

あるメガバンクの支店長は、「最近、東京都内での中国人のマンション購入の動きがコロナ前に戻りつつあります」話していた。

香港、上海と比較し、割安感のある東京不動産。今度どういった動きが生まれていくのか、注目したいと思う。

Hello News編集部

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