事業承継の重要性、伝えたい
ちんたい研究会は、2021年7月21日、オンライン上で勉強会を開催した。今後の事業継続の一つのあり方として、M&Aを検討する不動産会社や事業承継で悩む不動産会社の経営者ら61名が、Web会議システムZOOM上に集った。
「M&A 事業承継で経営手腕を発揮する」をテーマとする講演の登壇者は次の6名で、自身が体験した「M&A」の事例、「事業承継」の苦労話や成功の秘訣を語った。
三好不動産 | 代表取締役 三好修さん |
宅都ホールディングス | 代表取締役 太田卓利さん |
スマサポ | 常務取締役 藤井裕介さん |
みずほ銀行 | コーポレートアドバイザリー部次長 堀敬太さん |
クラスコ | 代表取締役 小村典弘さん |
外園淳税理士事務所 | 税理士 外園淳さん |


ちんたい研究会について(ホームページより)
全国賃貸仲介管理業のちんたい研究会とは、賃貸仲介管理業の経営者の方を中心に有志を募り、先進的取組みを共有することを目的としたものです。会では、先進企業からいろいろな経営ノウハウや戦略・戦術を学ぶことに加え、地域・FCを超えた経営者間での『気軽に相談し合えるネットワークづくり』も大事な目的としています。ベンチマークの後、毎回親睦会を開催し参加者同士の交流を深めています。全国賃貸仲介管理業ベンチマーク会は、株式会社クレシオが運営しています。既に30回の開催実績があり、参加者数はのべ1,000名を超えるに至っています。
主催の木村社長は、M&Aや事業承継をテーマに選んだ理由を次のように話した。
「不動産業界は高齢化しているが、事業承継がうまくいかず、経営を断念する会社も出てきています。しかし、どんな会社にも世代交代は必ずやってきます。では、どうやって事業承継の壁を乗り越えるか、また、課題に直面した際に慌てずに進めるためにはどうすればいいか。本日はこれらのことについて皆さんで勉強していきたいと思います」
事業承継を見据えて、相続対策のためにホールディングス化を進める会社も多いが、ホールディングス化のやり方を間違えてしまうと、まったく効果を発揮しないケースも多いと警鐘を鳴らす。正しいホールディングス化の方法を知り、今後不動産業界でも活発化するであろうM&Aについても多くの経営者に学んでほしいと参加者に語りかけた。
突然の社長就任
登壇者の一人、三好修社長が、三好不動産の代表取締役に就いたのは43歳の時だった。経営を司っていた叔父の逝去や社長の病気、そして会長を務める実父、勉氏の病が立て続けに襲ったことで、社長交代は突然に予期せぬ形でやってきた。
そこからの三好社長は苦難の連続だった。もっとも大きかったのは、20億円に上る借金と、株の問題だった。
「事業承継時に一番苦労したのは株の問題でした。会社をホールディングス化しようと考えた時に、私の株の持ち分は30%程度しかなかったのが障害になりました。そこで50%以上にするために、親族に頼んで売ってもらうように交渉しました。すべてあわせると株価は20数億円もあがっていました。株の問題だけは早めに解決しないと大変だと実感しました」
借金に関しては、「売上があがれば自ずと減っていく」という、三好社長らしい前向きな考えで取り組んだ。結果、10数年後に完済している。
こうした実体験は参加者にとって貴重であり、また賃貸業界では誰もが知る企業のトップの話だけに、多くの人々が聞き入っていたようだ。
後継者を育てることが大切
全国賃貸管理ビジネス協会によると、事業承継する相手が現時点で決まっていないという不動産会社の経営者の割合は50%ほど存在するという。三好社長は、自身の経験を交えながら、「株の問題と同じくらい大切なことは、早めに事業承継する相手を探して、その準備をしておくこと」と語った。
今回、参加者のなかには、実際に事業承継を終えたばかりの会社やこれから行うためにホールディングス化を検討している経営者もいた。どのやり方が正解かは、置かれている状況によって異なるとはいえ、参加者の真剣なまなざしと、うなずきながら話を聞く姿に、経営者にとって事業承継がいかに難しいことなのかを改めて思い知った。
Hello News編集部 鈴木規文
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