隣家から侵入してきた枝トラブル
2021年に行われた民法233条の改正により、「枝の切除に関するルール」が2023年を目処に変更になる。この改正内容を聞いて、以前、千葉県で空き家の調査を行っていた際、空き家の隣の一軒家に住む男性がこんなことを言っていたのを思い出した。
「隣の空き家に生えている木の枝が、私の家のほうまで伸びてきていて困っているんだよ。誰に対応をお願いすれば良いかも分からないし…」
こうした問題に悩んでいる人も多いことだろう。平成30年住宅・土地統計調査によると、空き家数は848万9000戸で、全国の住宅のうち13.6%の割合を占めている。近年、空き家ビジネスとして、賃貸はもちろん民泊やスペース貸し等の利活用も行われているが、依然として空き家の管理を巡ってトラブルになることが多いと聞く。
民法改正による変更点
では民法改正により、どのようにルールが変わるのだろうか。
第二百三十三条
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
第二百三十三条
土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
ここで注目してほしいのは、第233条3項だ。これまでは木の所有者しか枝を切る権利がなかったものが、今後は、木の所有者に枝を伐採するよう依頼したにも関わらず、所有者が枝を切除しなかった場合や、木の所有者が不明だったり所在がわからなかったりした場合に限り、木の所有者の許可なく枝を伐採してよいことになる。つまり、2023年以降、冒頭の男性は自身で枝を切ることができるようになるということだ。
また、今回の改正では、木の所有者が複数人いた場合などについても伐採のルールが変更となるなど、状況に応じて柔軟な対応が可能となった。とはいえ、これらのルールはまず所有者と連絡を取ることを前提としている。そのため、日頃から隣家に人は住んでいるのか、どういった人が住んでいたのかなど、コミュニケーションを取ることは重要だといえよう。
Hello News編集部 鈴木規文
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