弁護士に聞いた!賃貸業界に物議を醸した判例3選

最高裁判所が発行する「裁判所データブック」によると、2020年に行われた裁判の数は、刑事・民事等含め355万8317件ある。

裁判の数だけ判例があるわけだが、中にはその内容が後の事例に大きな影響を与える場合もある。そこで、賃貸住宅業界に特に影響を与えた判例を、ことぶき法律事務所の林幸平先生に3つ選んでもらった。それぞれの事例について紹介する。

目次

①神戸地裁平成11年9月20日判決

写真提供:神戸市
内容

築16年のマンションを取得して賃貸していたところ、築31年の時点で阪神・淡路大震災が起き、マンションの1階部分が押しつぶされて賃借人4名が死亡した事例。建物に設計施工上の欠陥があったため、通常、有すべき安全性を有していなかったとして、マンションオーナーに総額約1億2900万円の損害賠償の支払いが命じられた。

影響を与えた点

オーナーが関与していない建築時の建物の瑕疵であっても、所有者として土地工作物責任に基づき損害賠償の義務を負うことになった。

②最高裁平成23年7月21日判

内容

別名、「別府マンション事件判決」とも言われる。開発業者から賃貸用マンションを購入したオーナーが、雨漏りや壁のヒビ割れなどを理由に、設計事務所と施工会社を相手に損害賠償を請求した事例。最高裁は、建物の設計・施工者等は、建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い、かかる義務を怠り、建物に安全性を損なう瑕疵があった場合は、設計者や施工者は不法行為に基づく損害賠償責任を負うと判断をした。

影響を与えた点

本件は、福岡高裁の判断を最高裁が2度も覆したことで有名になった。マンションの買主とは契約関係にない施工会社等の不法行為責任を認めたこと、建物の基本的安全性を損なう瑕疵は、居住者の生命、身体又は財産に危険をもたらす場合(実際に事故が起こっていなくても)に認められるなどとしたことが画期的な判断となった。

③東京高裁平成12年3月23日判決

内容

共同住宅の賃貸借の解約申し入れの正当事由を判断する立退料について、引越し料等の移転の実費と、転居後の賃料と現賃料との差額の1〜2年分の範囲の額の提供で足りるとした事例。

影響を与えた点

共同住宅の建て替えを理由とする賃貸借契約の解約申し入れについては、かなり高額な立退料を要求されるケースもあるが、上記判例は立退料計算の1つの目安を提供するものとなった。


HelloNews編集部 鈴木 規文

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