職人シリーズ④原橋さん「見えないところにこそ、職人の誇りがある」

建設業界は今、建築費高騰と人材不足で倒産が過去最多という状況に陥っている。未完工事は15兆円超。そんな逆風の中でも、職人を志す若者が現場で活躍している。
ハローニュースでは、未来を担う若き職人たちの声を届けるため、現場で活躍する若い職人たちにスポットを当て、紹介していく。

過去回

内装職人として働く原橋さんは、賃貸から分譲までさまざまな現場を経験してきた。いまでは責任者として後輩を指導する立場にも立ち、日々、現場と人の間で心を砕いている。

「土木や外壁工事と違って、内装の現場は繊細なんです。見た目だけじゃなく、下地(パテ)処理など目に見えないところにも気を使わないと、最終的な仕上がりが変わるんです。だから、いつも神経を使いますね」

初めて原橋さんとお会いした時、見た目はいかつくて、最初はちょっと怖いのかなと思った。けれど話すうちに、ものづくりへの思いや細やかなこだわりがひしひしと伝わってくる。

作業現場では、オーナーや管理会社、入居者と顔を合わせることも多い。引き渡し後に指摘が入ることもあるため、常に気を抜けない。

原状回復工事は、どうしても同じ作業の繰り返しになりがちだ。それでも、「綺麗に仕上がると、自分もうれしいし、お客さんが『きれいだね』って言ってくれると報われるんです」と、仕上がった部屋を見たお客さんが喜ぶ瞬間に、大きなやりがいを感じると話す。

今は、自分が動くだけでなく、後輩を指導する立場でもある。意識していることは、ダメなことがあれば、きちんと怒ること。ただ、怒りっぱなしにするのではなく、「雰囲気が悪くなると、後輩が萎縮して仕事ができなくなるから」と、フォローまでしっかるすることがポイントだと話す。

ただ怒るよりも、現場の空気を整える。その姿勢の背景には、職人という仕事に対する真摯な思いがある。

また、原橋さんは賃貸物件だけでなく分譲リフォームにも携わっているからわかることがあるという。それは、分譲の現場に職人がいなくなっている理由だ。
通常、賃貸も分譲も見積もりは平米単価で計算する。しかし、分譲は常に人が在宅している現場での作業となるため、人の目があることから常に気を遣うという。
そのため、空室で作業できる賃貸の現場に人が流れやすい。こうした現状を受け、原橋さんは次のように指摘する。
「これからは“平米単価”じゃなくて、仕事の中身で見積もりを作れるようにしないといけないと思っています。腕に見合う金額を払ってあげるようにしなければ、職人を続けるモチベーションが続きにくい」と話す。

「賃貸の現場って、空室で作業することが多いから、結果しか見てもらえません。でも実際に作業しているところを見てもらえれば、この仕事がどれだけかっこいいか分かってもらえると思うんです。床や壁紙が貼られていく過程って、ほんとに面白いんですよ」

休日、家族と買い物に出かけるのが楽しみだ。大きな休みが取れるわけではないが、仕事の合間の家族との時間を大切にしている。

将来の夢を尋ねると、少し照れくさそうに笑った。
「妻の実家が山口県にあって、そこをDIYで直したいんです。内装以外も好きだから、そういうのを自分の手でやっていけたらいいなと思っています」

職人がもっと尊敬される世の中になるためには、「自分たちがまず、ちゃんとした仕事を見せないといけない」という原橋さん。彼の心の内側にあるものは、技術と誇り、そして人としての誠実さだ。原橋さんは今日も、見えない部分にまで注意を払いながら、現場に立っている。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次