2024年4月に省エネ性能表示制度が始まり、新築建築物の販売・賃貸の広告などに、省エネ性能の表示ラベルを表示することが努力義務となった。これに続いて、既存住宅向けに「省エネ部位ラベル」の運用が2024年11月1日より開始される。
省エネ部位ラベルが表示されるようになれば、住まい探しの際に、断熱性の高い窓や、高効率の給湯器の有無を確認することが可能となる。
省エネ部位ラベルの対象は?
「省エネ性能表示ラベル」は、2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物が対象となるが、「省エネ部位ラベル」は下記①②を満たす一戸建て、賃貸住宅、マンション、買取再販住宅を販売・賃貸される物件が対象。販売または賃貸する用途でない住宅は対象外となる(例:ウィークリーマンション)。
① 2024年3月31日以前に建築確認申請を行った
② 省エネ性能の向上に関わる部分はあるが、住宅全体の省エネ性能の把握が困難
不動産情報サイト アットホーム、SUUMO、LIFULL HOME’Sでは、11月1日より既存住宅を対象に「省エネ部位ラベル」の表示を開始することを発表している。
省エネ部位ラベルの表示項目
省エネ部位ラベル表示の流れ
賃貸住宅の場合、省エネ部位ラベルを発行するのは「貸主」もしくは「サブリース業者」。しかし、それが難しい場合は賃貸管理事業者に依頼しても構わない。
現況確認の結果に基づき、広告等に表示するラベルを発行し、仲介事業者へ住宅情報を連携する際にラベルを伝達する。仲介事業者やポータル事業者はラベル画像を掲載。入居者が決まったら、賃貸・仲介事業者は、賃貸契約の際などに入居者へラベルを使用して説明する必要がある。省エネ性能情報が消費者(入居者)にきちんと伝わることが重要だ。
なお、「省エネ部位ラベル」と「省エネ性能ラベル」は同時に掲載することはできない。国土交通省では、既存住宅でも設計図面や書類等の情報がある場合は、省エネ性能ラベルの表示を推奨している。
省エネ設備のメリット
住宅の中で熱の出入りが最も激しいのが窓。冬は58%の熱が流出し、夏は73%の熱が窓から入ってくる(一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会調べ)。窓のサッシやガラスを断熱性の高いものに取り換えれば、冷暖房費を抑えることができる。さらに、給湯器を高効率なものに取り換えれば少ない電力でお湯を沸かすことができるので、やはり光熱費を抑えることができる。
省エネ性の高い設備に換えれば、CO₂を削減できるだけでなく、ランニングコストを下げることができるのだ。
ただし、設備の交換には一つ問題がある。それは初期費用が高いこと。
それにも解決策はある。省エネ部位ラベルの必須項目である「窓」と「給湯器」、任意項目の「玄関ドア」は、国の補助金制度が利用できる。補助金額の詳細は「住宅省エネ2024キャンペーン」で確認できる。
省エネに関しては、さまざまな支援があり、自治体独自の支援もあるので、ぜひお住いの地域で調べ、活用していただきたい。東京都にいたっては、補助対象が多すぎて、サイト上で絞り込み検索ができるようになっている。
省エネ性能の需要
日本の最終エネルギー消費量の約3割を占める建物分野では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2022年建築物省エネ法の改正、2025年省エネ基準適合義務化や省エネ住宅の住宅ローン減税など、省エネ性能の底上げや誘導等が措置されている。
消費者の間でも、戸建てを中心に省エネ性能は認知されつつあるが、住宅の省エネ性能への関心は、昨今の電気料金高騰によるところも大きいようだ。
LIFULLの調査で、賃貸物件への引っ越し検討者へ「物件の省エネ性能を意識する理由」を聞いたところ、74.7%の人が「電気・光熱費を安くしたい」と答えた。
また、アットホームが省エネ性能ラベルの掲載の有無で問い合わせ件数を比較※したところ、新築賃貸では省エネ性能ラベル掲載がある物件は、ラベル掲載なし物件の1.6倍という結果が出た。(※2024年4月から2024年9月「不動産情報サイトアットホーム」掲載データより算出。新築賃貸の省エネ性能ラベル掲載なし物件を1としたときの倍率を表記。)
省エネ性能表示ラベルのある部屋の反響は大きく、消費者の関心と需要の高さを示している。賃貸オーナーや賃貸管理・仲介会社には、省エネ性能を重視した住宅提供の重要性を認識し、高効率な省エネ設備を導入することを期待したい。
欧州各国と日本の省エネ性能表示制度の違い
日本では2024年4月に始まった省エネ性能表示制度。しかし環境先進国といわれる欧州各国では、努力義務ではなく「義務」として2006年からすでに開始されている。
エネルギーランクがAからGまでで表示されており、フランスでは2025年からGランクの住宅の賃貸を禁止、2028年にFランク、2034年にはEランクまで拡大される予定。イギリスでは2020年4月からFとGの賃貸が違法となり、2030年までにDとEランクの賃貸禁止を目指している。
下表は、日本と欧州各国の省エネ性能表示制度について一覧にしたもの。
制度が開始された年月を見ただけでも、日本がどれだけ遅れているか、おわかりいただけると思う。
省エネ性能ラベルや省エネ部位ラベルが活用され、消費者の選択基準が広がるとともに、日本においても住宅の省エネ性や脱炭素に対する意識の向上に寄与することを願う。
Hello News 編集部 柳原 幸代
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