「ブロックチェーンでニッポンの扉を変える!!」3人の若き経営者たち

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事務所はまるでシリコンバレー

「私たちが目指すのは、『Tobiraエコノミー』という新たな経済価値です。単純に鍵の世界でシェアをとりたいのではなく、全く新しい価値を生み出すために立ち上げたのがビットキーです」

創業は、2018年8月と1年にも満たない。しかし、株式会社ビットキー(東京都中央区)の共同創業者CCO、寳槻昌則(ほうつきまさのり)さんの表情は自信に満ちている。

同社は、司令塔として技術開発を先導するCEOの江尻祐樹さん、営業を行うCOO福澤匡規さん、そしてクリエーション、新市場創出を担当する冒頭の寳槻さんの3人の技術者が集まり、起業した。年齢はみな30代前半。シリコンバレーのベンチャー企業を彷彿させる出で立ちだ。3人は、前職のワークスアプリケーションズ在籍中に知り合い、互いの志に共感。ブロックチェーン技術を応用した新業態を立ち上げるべく結集したという。

最初の挑戦は、「IDや鍵を新しい形にできないか」という着眼点からスタートした。

「とどのつまり、世の中、全てIDとKeyで物事が成り立っていると思ったんです。IDはアイデンティティーで本人認証、Keyは鍵です。私たちは、この二つを権利と考えました。そして今後は、その権利をいかにスムーズに移転できるかが重要になっていくと考えました」(寳槻さん)

「はて?」と思ってしまった。

「権利?行使?」

筆者が、「なんだかよくわからない……」という顔をしたのがわかったのか、すぐに補足してくれた。

要はこういうことだという。

例えば、玄関ドアであれば、開けるために鍵が必要だ。鍵を持つことによって開けるという権利を行使する。その権利を、改ざん不可能なブロックチェーンの技術を使い、かつデジタルにすれば、生活はもっと便利になる、というアイデアだ。

商品化の第一歩は、スマートロックからスタートした。

3Dプリンターがフル回転

スマートロックなどデジタル機器の開発に関しては、莫大な開発費用がかかるイメージがある。

商品を形にするには、まず金型が必要だ。20年前であればこの金型を作るのに工場から作らねばならなかった。

しかし、寳槻さんは「“3Dプリンターの登場”で、開発期間もコストも劇的に変化した」と語る。

事務所には、筆者も初めてみる3Dプリンターが1台、でんと置いてあった。

「今はこれが金型の代わりになります。規格やデザインをやり直したり、作り変えたりするには、もっとも都合がいいです。一般的に、以前であれば金型を作るのに数ヶ月はかかっていたそうです。それが今ではセットしたら翌日の朝には試作品ができあがっているんですよ」と屈託無く笑う。

そこには、現在日本にある、ありとあらゆる形状のドアノブが置いてあった。ここ最近は滅多にお目にかかることもなくなった「握り玉」のノブまで転がっている。

どうやったら全ての形に対応できるか、日夜研究を重ねているのだという。

社員は72人で半数以上が開発を行う技術者だ。

一人でパソコンを3台操る人、足用マウスを使いこなす人、誰もがIT技術に関しては「俺が一番」という顔をしているツワモノ揃いだ。

2017年に商品化の構想をスタートし、2018年8月に会社設立へとこぎつけたわけだが、その間、株式会社VOYAGE VENTURESのほか、複数の個人株主からおよそ3.4億円の出資を集め、あっという間に現在の社員数まで拡大した。

そして構想から2年後の2019年4月には販売を開始するという危なっかしいほどのスピードの早さ。これこそがビットキーの強さとも言える。

「Tobiraエコノミー」で開けると閉めるの未来を変えたい!

「セキュリティーの重要性は年々高まっていますよね。これまでの日本のセキュリティーは、どちらかというと“閉じる”という方向に向いていたと思います。しかし、扉は閉じるだけではなく、開くという性質があります。今後は安全に”開ける”ということも重要になっていくと思うのです」と寳槻さん。

子供のお迎えや帰宅時、荷物の受け取り、シッターサービスの利用時、高齢者の見守り、障がいを持った方のケア、様々な場面で、私たちは鍵を使っている。その時々の「権利の行使」が本当にスムーズに行われているか。持っている人が誰なのかだったり、時間的な制約だったりの壁に知らず知らずのうちにぶつかってはいやしないか。

寳槻さんは、鍵問題を考えることは社会問題の解決につながると確認している。

デジタルやITの活用に重きを置く企業の印象が強いビットキーだが、今年5月には宮崎県にコールセンターを立ち上げたという。利用者のサポート体制強化としてカスタマーサクセス(CS)部門を立ち上げたのだ。

「宮崎でやりがいを持って働ける仕事や職場づくりを目指したい。I・Uターンの促進にも繋がれば嬉しい」と寳槻さんは語る。

クラウドファンディングで1880万円を調達

最後に、ビットキーが意を決して4月から販売しているスマートロック、「bitlock LITE(ビットロック ライト)」を紹介したい。

スマートロック自体は5年ほど前から登場し、賃貸業界でも度々話題になってきた。他社と異なるのは、その価格設定だ。なんと「初期費用なし」。つまり、無料で導入可能だという点だ。その代わり、利用料として月額300円がかかる(1年契約した場合)。その中には、端末の利用料とサービス利用料が含まれている。サブスクにしたのは、ビットロックは数万円もする買い切りのプロダクトではなく、Tobiraエコノミーサービスを利用するためのインフラだと考えたからだ。

鍵の分野での珍しいサブスクリプションモデルに多くの関心が集まったことは、クラウドファンディングの結果を見れば明らか。わずか8時間で目標金額の100万円を達成したのだ。「賛同者はいる。突き進もう」。そう確信した瞬間だった。

課題もある。施工に関してだ。

他社従来品の多くがそうであるように、ビットキーも工業用の両面テープを利用し設置するという。他社製品ではとかく両面テープが剥がれてスマートロックが落下するという事例を耳にする。寳槻さんは、この点を「実証実験を繰り返した際に大きな問題はなかった」と説明するが、実際の設置はこれからであり、実際に問題が起きないかは注目したいところだ。

Hello News編集部 山口晶子

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