「一生に一度の買い物」の強い味方、ホームインスペクター養成所

中古住宅の流通を促すため、国は2018年4月1日、宅地建物取引業法の一部を改正し、不動産取引の重要事項説明の際に、建物状況調査をしているかどうか、その実施の有無を説明することを義務付けた。住宅診断(ホームインスペクション)を先駆けて行ってきたさくら事務所(東京都渋谷区)のインスペクション講習に参加し、話を聞いた。

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ホームインスペクターの役割

実際には売主が調査実施することはまだ少ないのが実情だが、建物状況調査に注目が集まったことで、購入者が住宅診断士(ホームインスペクター)に依頼する件数が増加しているという。「一生に一度の買い物である住宅購入に失敗したくない」という考えから購入者、購入検討者からの依頼が多いようだ。

ホームインスペクターとは、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会で定められた資格。住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見極め、適切なアドバイスを行う者である。宅建で定めている建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者講習を終了した建築士とされている。建築士がホームインスペクターの資格を持つことで建物状況調査を行うことができるという。「協会で定めているホームインスペクションの方が調査項目は多いです。もちろん弊社では、宅建の建物状況調査も実施できます。売主さんからの依頼は、建物状況調査ですが、購入者さんからはより詳しい調査を行うホームインスペクションの依頼が中心です」(さくら事務所広報室)

では実際にどのような方法で住宅診断は行われるのだろうか。

さくら事務所では、ホームインスペクションを設立当初の1999年から提供し、2019年6月時点で4万5000件の実績を持つという。全国にホームインスペクターの資格を持つ者が40~50名在籍しており、各地の調査依頼に対応している。また、ホームインスペクターの養成にも力を入れており、新人に対して定期的に研修を行っている。座学だけではなく中古住宅を研修センターとし、実際の問題点や判断方法を教えている。

「視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感が何より大切」と受講者に語るのは、研修の講師を務める水永浩一郎さんだ。今まで診断を行ってきた住宅の数は、3000件以上だという。ホームインスペクターの診断する場所は、外観から内部、屋根裏、床下など様々な箇所があげられる。講座では、写真を交え見落としがちなポイントを伝えていた。例えば、エコキュートは、地震が発生した際に倒壊恐れがあるため、垂直にしなければならないが傾いて設置されているケースがある。実際見るとわかりづらく、水平器などを使用してもいいが、外の場合は、少し下がって他の建物と比べて見るとわかりやすいということなどを説明。中には、玄関の下駄箱の扉の取り付けが箇所が間違えており、扉が開かない事例もあった。

実際の住宅で五感を訓練

今回訪れた研修センターは、築40年の戸建て住宅をそのまま利用。研修のため、あえて改修しないでいるという。実際に住宅の外観に出ると、ポストが曲がって設置されていたり、雨漏りがあったりする。

これらを新人のホームインスペクターが実際に診断していくという。室内でも歩いて床鳴りがならないかや雨漏りがないかなど把握できるようにしている。

また、屋根裏にも登り雨漏りの原因や躯体が正常かなど見極められるように訓練していく。

同社への依頼は、新築戸建て住宅と既存住宅の割合は半々くらい。昨年から世間を賑わせいる施工不備問題の影響で、アパート、マンションのオーナーからの依頼も増えてきているという。

実際に参加してみて感じたことは、調査項目が多いことに驚いた。外観の雨樋や軒下、室内の様々な建具や換気口など一般人では気づかないところまでしっかり調査をしてくれるので購入者は安心すると感じた。しかし、実績がものを言うスキルなので、一人前のホームインスペクターの育成には時間がかかりそうだ。

Hello News編集部 山口晶子

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