子を持つ親に聞いてみた「子連れ出社、どう思う?」

子どもが突然、病気になった時、「保育園には預けられない」、「両親に預けることが難しい」、「夫も妻も仕事を休めない」…小さな子どもを持つ家庭なら一度は経験している問題ではないだろうか。今回は、子どもを保育園に預けている男女5人と独身男性1人に集まってもらい、「子連れ出社」について語る座談会を開催。どんな解決策があるのかを話し合った。

目次

テーマ:「子連れ出社、どう思う?」

日程:2019年8月23日(金)
場所:Hello News 会議室

まずはみなさんの職業とお子さんの育児環境について教えてもらえますか?

長谷川:間取り制作ソフトを開発している日本スキルズの代表取締役です。ソフトの販売やシステム開発を行っています。2歳の息子がいて、普段は保育園に預けています。

上田:昨年4月に創業したビットキーで、スマートロックの営業をしています。3歳の娘がいて、保育園に預けながらベビーシッターにも来てもらっています。

寺田:ホテルや旅館向けに商品やサービスを提供するメディアウェイブに勤めています。7歳と2歳の娘がいて、それぞれ小学校と保育園に預けています。

大友:不動産関係の会社で働いています。2歳の娘がいます。保育園に預けています。

鈴木:ハローニュースでWeb運営を行っています。2歳と1歳の娘がいて2人とも保育園に預けています。

小野:今回は独身という立場から参加します。フリーの記者をしています。

 勤務先家族構成子連れ出社の経験
長谷川 さん (父)日本スキルズ/代表取締役妻、 息子2歳有り (休日)
上田 さん
(父)
ビットキー/営業妻、 娘3歳有り (休日)
寺田 さん
(母)
メディアウェイブ/営業夫、 娘7歳、 娘2歳無し
大友 さん
(母)
不動産関係会社/電話応対夫、 娘2歳無し
鈴木 さん
(父)
ハローニュース/Web運営妻、 娘2歳、 娘1歳有り (平日)
小野 さんフリー記者独身、 1人暮らし無し

「仕事に集中できない」「会社に連れてきては危険だ」など、子連れ出社の是非が昨今、問題になっています。とはいえ、子どもを保育園に預けられなかった時、子連れ出社という選択肢しかない人もいます。みなさんは子連れ出社の経験はありますか?

大友:社員は100人いますが、子どもがいるのはまだ5人だけです。子連れ出社できる雰囲気ではないので、まだしたことはありません。会社としても決まりがないので子連れ出社はNGだと思います。なので、子どもが熱を出したなどで保育園に預けられなかった時は、近くに住んでいる義理の両親に見てもらっています。

寺田:私も子連れ出社は経験したことがありません。会社内で、子どもがいる家庭は私1人だけです。なので、会社として子連れ出社に関する規則はまだありません。ただ、今後子どもがいる人が増えれば、制度ができる可能性もあると思います。

鈴木:子どもが突然、熱を出して、保育園に預けられなかった時、子連れ出社を経験しました。最初は子どもを連れて、始業前に自宅で仕事をするのに必要な資料を取りに会社に行き、帰宅しようと考えていたのですが、準備をしている途中で社長が来て「このまま子どもと一緒に仕事をしても良いよ」と言ってもらえたので、結果的に子連れ出社になったという形です。

上田:土曜日に一度だけ経験しました。妻が仕事を休めず、どうしても私が子どもの面倒を見なければならなかった時です。上司に許可を得て、仕方なく営業先に連れて行ったのですが、子どもが場の雰囲気を和ませてくれて、受注まで進めることができました。

長谷川:私も土曜日に連れて行ったことはあります。会社には私しかいなかったため、仕事をしている間は、事務所内で自由に遊ばせていました。

長谷川さんは経営者ですが、会社として子連れ出社は認めていますか?

長谷川:その日の仕事の内容によってですが、概ね認めています。空きスペースがあるので、子連れ出社する人がいたらそこにいてもらうような形になります。ただ、子どもを連れて出勤すること自体が大変だと思うので、今は誰でも在宅で仕事ができるような環境を整えています。私自身、育児をしている身なので、そういった大変さや苦労は分かっているつもりです。

小野:独身の立場から聞かせてもらいたいのですが、そもそもみなさんは子連れ出社をしたいと思っていますか?

鈴木:みなさん同じ意見だと思いますが、子連れ出社をしたいとは思いません。せざるをえなかった状況にあったということです。一番は国や民間が運営している病児保育、病後児保育に預けることが優先です。ただ、定員が埋まっていて登録できなかったり、場所によっては料金が高かったりするので、なかなか難しいです。二番目の選択肢は祖父母に預けることですが、それができないという場合もあります。そのうえで、どうしても会社に行かなくてはならない時に、初めて子連れ出社という選択肢になると思います。

会社側としても、子どもが職場にいることで、怪我など万一のことがあったらどうしようと考えてしまいます。みなさんは、どういう環境であれば子連れ出社をしてみたいと思いますか?

寺田:そもそも子どもを連れて仕事をすることは難しいです。連れてきたところで、私がどうしても手が離せない仕事している時に、私の代わりに子どもを見てくれる人はいないので…。

大友:安全面などについては特に気にしていませんが、やはり子どもにずっと付き添っていなければならないので、環境どうこうというよりも、誰にも迷惑を掛けないよう、会社を休むことを選ぶと思います。

上田:お二人のお話しにもあるように、会社に子どもを連れてくるということは子どもが病気だということ。なので、やはりベビーシッターが会社にいるとか、誰かが代わりに見てくれる環境にないと難しいのかもしれません。とはいえ、子どもを見てくれる環境があっても、他の社員の仕事に支障をきたす場合はNGだと思います。

小野:前職含め、私自身、子連れ出社している人を見たことは過去に1度しかありません。それくらい珍しいことなのですね。

長谷川:そもそも最初から子連れ出社が可か不可か規則として決めていない会社で、「子連れ出社してもいいですか?」と聞ける人はなかなかいませんよね。

では、子どもを保育園に預けられなかった時、どういう対応をしているのですか?

大友:義理の両親が近所に住んでいるので、預かってもらっています。こういう状況を事前に想定していたので、それを見越して近所に引っ越しました。

寺田:私は、両親がそばに住んでいないので、私か主人が仕事を休んでいます。

上田:今のところ、幸いにも子どもが病気になったことがないので、保育園に預けられなかったことは一度もありません。ただ、妻が国際線のCAをしており、月に2~3回は海外にいます。そういう時は、保育園が終わる18時から23時までは、ベビーシッターさんに自宅で見てもらっています。今後、平日に子どもを保育園に預けられない状況になってしまったら、私が仕事を休むしかないですね。

今回、平日に子連れ出社を経験したことがあるのは鈴木さんだけですが、実際に子連れ出社をしてみてどう思われましたか?

鈴木:気まずさはありました。仕事や会議の妨げになったらどうしようとか、もし子どもが躓いて転んでケガしてしまった時、会社の人が責任を感じてしまったらどうしようとか。ただ、「子どもがいたから会社の雰囲気が明るくなった」と言ってもらえた時は、嬉しかったです。

小野:確かに子どもが会社にいて、私のすぐ隣で寝ていたりしたら、仕事のしづらさは感じてしまうかもしれません。とはいえ、今までのお話を聞いていると、子連れ出社をしたくてしている人なんて誰もいないのですよね。であれば、子連れ出社で困っている人を見かけたら、「何かあれば遠慮なく言ってね」と優しくしてあげたいなと思いました。

子連れ出社を実際に認めている会社は多いのでしょうか?

長谷川:今は企業内託児所を作ると補助金が出るので、以前に比べたらそういう会社は増えていると思います。

鈴木:体験ギフトの制作や販売を行う「ソウ・エクスペリエンス」という会社では、社内規則で子連れ出社可能と決められているようです。そのため、子連れ出社されるのが嫌だという人は入社しないので、社員さんたちは遠慮なく子連れ出社しているようです。

確かに子連れ出社については、会社がルールを決めることが、働く人にとって最も良いことなのかもしれません。これについてはどう思いますか?

長谷川:経営者の立場からお話しすると、仕事の効率を考えれば子連れ出社よりも在宅ワークの方が良いと思っています。私の会社ではそのどちらもOKとしていますが、今後は在宅ワークへの切り替えを進めていきたいと思っています。

上田:私もそう思います。仕事さえできれば在宅でも問題ないと思います。

鈴木:在宅ワークを許可する場合、会社としてのルールを作るのが難しいと聞いています。そのため、なかなか取り入れられない企業が多いのかもしれません。今の時代に合った会社のルールを作ることが今後の課題なのでしょうか。

長谷川:日本人は真面目すぎますよね。決められた期間内に仕事が終われば、会社を休んだり、自由に在宅ワークをしたりして、もっと柔軟に対応できればいいのになと思います。そして会社側もそういう働き方を認めていかなきゃいけないのかなと考えています。

これまでの話をまとめると、「子連れ出社は最終手段であり、できるならばしたくはない。代わりにルールを作って在宅ワークを認めるのも有効な手段のひとつ」ということでしょうか。もし他に選択肢があれば教えてください。

長谷川:そうですね。ただ、一番の望みは国が保育士さんの給与面など労働条件を整え、普通の保育園でも病気の際に預かってもらえるような環境があれば良いと思います。

寺田:登園後に熱などが出ると、すぐに迎えに行かなくてはなりません。もし病気の子どもも預かってもらえる制度が整えば、こういうケースにも対応できるので良いと思います。

大友:私は今、「時短」で働いているのですが、それでも保育園に迎えに行く時間がギリギリになってしまうことがあります。もし可能ならば病気の際に預かってもらえることに加えて、預けられる時間をもっと伸ばしてほしいと思います。

上田:妻の会社では、ベビーシッター代の何割かを会社が負担してくれたり、子どもを預ける施設が会社の中にあったりします。CAという職業柄、女性が多く働いている会社なので、育児に関する補助制度が充実しているのだと思います。育児をする男性が増えた今、多くの会社でこうした制度を取り入れてほしいですね。

(敬称略)

今回の座談会では、様々な立場の人から話を聞いた。そこで見えてきたのは、「子連れ出社」はその当事者よりも国や企業が考えるべきテーマなのかもしれないということ。まずは組織としてのルールを決め、そしてそういう状況に陥った際に働く側に選択肢を与える。こうして環境面を整えることが、人材の採用や定着といった観点からも重要なことではないだろうか。

Hello News編集部 鈴木規文

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