<後編>日本人だけが知らない?!アニメ文化の破壊力

梅沢
日本に2つ、アメリカに4つ、合計6つの家を持ち、4台のマイカーを乗りこなして自由な移動を繰り返す“現代版フーテンの寅”こと、梅沢励さん。東京、千葉、マイアミ(フロリダ州)、オーランド(フロリダ州)、ジャクソンビル(フロリダ州)、アトランタ(ジョージア州)を行き来する「多地域居住」の暮らしは、今年で16年目に突入した。5年前、グリーンカード(永住権)を手に入れ、生涯アメリカ居住を宣言。オンラインアパレルショップで生計を立てながら、週末は、アメリカ国内の催事場で日本から運んだ飴玉やグミ、チョコレートを売りさばく気ままな暮らしを楽しんでいる。

本連載は、アメリカ人とニッポン人、双方の感覚を併せ持つ寅さんこと励さんが、リアルで痛快な「多地域居住ライフ」を紹介する本邦初の手引書である。今回は、前回に引き続き、アメリカで人気のアニメ事情について私が感じたことをお伝えする。

前編はこちら

目次

アメリカで流行っている日本のアニメ

アニメイベントで知り合った10代の女の子に「アニメのことを何も知らないなんて、あなたは本当に日本人か?」と聞かれ、僕は「えっ?!日本人だよ!アメリカが好きで、アメリカに来ているんだ。アメリカンドリームだよ。あこがれもあるよ」と言った。

ただ、この子に言わせると「今は日本の時代だよ!私は109に行きたい。渋谷、原宿!日本のものは何でもkawaii!!日本に行きたいの。日本の女子高生になりたいの!」とのこと。。

一体、どうやってそんなに日本の文化がアメリカに広まったのだろうと考えてみると、何年もお菓子やおもちゃを10代の子たちに販売していて途中でふと思ったことがあった。

「この子たちは、きっと日本の漫画やアニメを観て育っているんだ。もしかしたら、オタクと呼ばれる、ちょっとイケてない子たちなのかもしれない」なんて、、、。

カメラを向けると笑顔でポーズを決めてくれる(何のコスプレかは不明)

僕は、10代後半になっても「ドラゴンボールがどうのこうの」と話しているのはかなり子供っぽいと思っているのだが、この子たちの見ているアニメは、どうやらそういうアニメではないらしい。学園生活モノだったり、日本の家族の話だったり。そのうちジブリが人気になって、日本の田舎の映像がこういった子たちの間に浸透していくのかなと思ったり、、、。そうこうしているうちに、この子たちが大学生になって、日本語を勉強するようになって、日本に行くようになるのだろう。

たくさんの知り合いが、日本に旅行へ行っている。そして帰ってくると、日本での旅行話をさんざん僕に語っていく。その後、数名の子たちは日本に留学し、そして日本で英語の先生をするようになった。

この商売を始めて10年以上がたつ。当時10代だった子たちはみんな20代になった。完全なる大人だよね、自由に何でもできる大人になった。しかし、アニメや漫画への興味は消えず、何回も日本に行く。

アニメを求めて日本に旅行に来たアメリカの友人

この子たちと話をしていると、ちょっと待てよ、、と思うような話に出くわすことがある。アニメや漫画はもう子供向けにできているわけじゃない。。。

「デスノート」や「進撃の巨人」。これらのアニメを皆さんは見たことがあるだろうか?

デスノートというのは、死神から渡されるノートで、そのノートに人の名前を書くと、名前を書かれた人が死ぬ。主人公はニュースで流れる悪人(容疑者)の名前をノートに書き、次々に殺害していく。そして自分が「神」であるかのように行動する。悪人は死刑だと。。。

それは、「私刑の禁止」に当たる。「100人の罪人を野に放しても、1人の善人の自由を奪ってはいけない」。これが法律の原則、大人だって理解できていない。

「進撃の巨人」は人類と巨人との闘いの話が描かれている。「デスノート」同様、考え深いアニメだ。巨人は人類にとって脅威だから、その脅威に壁をつくることで、見えないようにしてきた。また、その壁があるから、人類は平和に生きていた。ところがある日、その壁が崩れて巨人が侵入してきた。平和が壊された。「どうしてこんなことになってしまったのか?」と嘆くのが第一話。

隣国には核兵器があって、いつ撃ち込まれてもおかしくない、でも、安全保障という壁の中にいて、僕らは平和に暮らしている。ある日ミサイルが飛んできて「どうしてこんなことになってしまったのか?」。我々は壁の中にいるんだよ!同じことが漫画で語られている。

そう。アニメは子供向けだったり、くだらなかったり、子供が楽しめるようなものもたくさんあるが、大人が読むものとして作られているものも沢山あるように思う。メッセージが込められている。舞台は壮大だ。

僕らが知らないところで、一体何が起きているか?

アメリカでは、今でも毎週のようにアニメを題材にしたイベントが開かれている。参加者は数百人単位のモノもあれば、10万人を超えるものもある。映画の俳優が呼ばれ、声優が呼ばれ、歌手やアーティストが集まるものもある。アニメの声優は今や大人気だ。サインを求めて人が並ぶ。ちなみに、AKB48やモーニング娘がアメリカのイベントに呼ばれれば、ファンはアメリカ全土から集まってくる。

ナルト疾風伝のオープニングソングを歌っているアーティストがアメリカにやってきた

「ジャパン イズ COOL」。クールジャパンは小泉時代にスタートした。麻生太郎は、アニメの殿堂を作ろうと国民に持ち掛けた。でも世論はそこまで付いてきてない。そこまでというのは、日本以外でどれだけ外国人が日本へ愛を送っているのかということ。当時は、受け手である日本人がそのことにまったく気が付いていなかったと思う。

オリンピックを来年に控えて、外国人は今まで学んだアニメをもとに、漢字やひらがな、アニメのキャラクターのタトゥーを入れて、日本語の入ったTシャツを着て、自分こそがもっとも日本愛が強いのだと言わんばかりに日本へ上陸してくる。

今後は今以上にもっと多くの外国人が日本にやってくるだろう。日本はもう、物価の高い国ではない。むしろ、物価は低く、訪れやすい国になっている。見ればわかる。一世代前と比べて、明らかに訪日外国人は多い。日本という国を知るきっかけは、もしかしたら幼少期にみたアニメかもしれない。

アニメの中には、日本の生活が刻まれている。僕らが、ビバリーヒルズ高校生白書を見ながら、「自由な服装や個人ロッカーや先生との会話が日本のそれとは違う!なんだ、アメリカという国は!?」と学んだように、今、外国人は、日本の漫画、アニメを見ながら、日本に魅了されて成長した。

日本語の文字が間違えた日本語だったとしても気づかない

彼らから注がれる「愛」に僕らは気が付いているだろうか?僕らは応えられるだろうか?

「コスプレイヤーに会いたいんだ。メイドカフェに行きたいんだ。ジョジョ展、ドラゴンボール展、ポケモンセンターに行きたいんだ」

日本人はそんな彼らの声に応えられるか?

僕はまるでアニメに興味がない。でも世界は日本をアニメの宝庫だと思ってみている。

自分の国を紹介するのは大変だ。

アニメの1つや2つ彼らと話ができずに、日本のオモテナシってありえるだろうか。

梅沢励

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