「都市型家庭倉庫」って何?!新型コロナの影響と不動産業界で起きている4つのこと

2020年3月12日現在

今後の不動産価格や地価はどうなるのだろうか。

富裕層の不動産運用を代行する神農貴大さんはこう言う。

「下がった瞬間、安値で仕込みたい(買いたい)人と、先行きへの不安から早々に売って手放したい人。両者が存在します。ですから、「地価・不動産価格暴落!」といったような報道があれば、または、そういう風につけこむ不動産会社が増えれば、一気に下がって行く可能性はありますよね」

SNSで「トイレットペーパーの在庫切れ」とつぶやいたユーザーによって、あっという間に店頭からトイレットペーパーが消え、嘘が真実になってしまったのを考えれば確かに頷ける。情報の信憑性を自ら判断する力が問われている。

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不動産価格は「下がらない」と答える人が多い

複数の不動産関係者に話を聞いたところ、新型コロナウイルスの影響による「不動産価格の下落は『ない』」と答えた人が多かった。

分譲マンションの販売現場では、3月決算前の値引きが個別に多少ある程度で、ほとんど価格に変化はないという。逆に、突然の休校で行く場所がないファミリー層がモデルルームに押し寄せ、人気のお出かけスポットになっているという声もあった。

「昨年の台風被害で屋根が飛んだ戸建て住宅の映像が多数流れたことも影響し、『戸建てよりマンションが安心』という風潮がありました」とは、ある私鉄不動産会社の幹部。また、都心部における戸建て物件は希少で、価格も高いことから、都心で立地の良いところとなると、マンションを選ぶ傾向が強まっているようだ。

打撃大きいホテル・民泊業界

新型コロナの影響が最も色濃く出ているのがホテルや民泊業界だ。東証REIT指数はこの数日で10万円ほど下落したが、その中でも人気の星野リゾート・リート投資法人でさえ、59万1000円(1月14日)から41万1000円(3月9日)まで急降下している。

東証REIT指数 日足チャート

インバウンドを主な対象にしていたホテルや旅館については、撤退の危機に追い込まれる可能性はある。前述の神農さんによると、「区分マンションを購入し、2020年の東京オリンピックまでは民泊運営で稼ぎ、オリンピック期間中は自分自身が住んで、閉会を迎えるまでに高値で売り抜ける、と考えていた中国人投資家からの売り案件がある」と語る。

観光需要を見越して購入され、未着工になっているホテル用地の行方も気になるところだ。

大手ホテルチェーンのA社は、かなり高い金額で都心や一等地の土地を次々と取得したため、「観光客が減って大変だろう」という心配の声があがっている。しかし、「A社の代表者2人の個人資産は8000億円あるというから、この状況で潰れるホテルや旅館を買い漁るために虎視眈々では?」との声も同時にあがっている。

ホテルや民泊では利用者が減少している一方、新型コロナの影響が小さいのが時間貸しビジネスだ。ハローニュースが運営するレンタルスペース「はろ~ず」では、近頃の外出自粛ムードにより、騒動前と同等か、それ以上に予約が増えている。実際に聞いた利用目的のなかには、「延期になった結婚式の代替ウェディング会場として」や「コロナが気になるから個室で遊べる場所を探していた」などが多かった。キャンセルはなく、むしろ予約は昨年もっとも多かったラグビーW杯開催時期の10月、忘年会シーズンの12月と変わらない。ただ、トイレットペーパーの在庫がゼロになってしまい、現在は持参してもらうよう協力をお願いしている状況だ。

未だに在庫切れが続いているトイレットペーパー

■今後の景気予報(作成:ハローニュース/2020年3月12日)

企業のテレワーク実施を国が推進していることもあり、オフィス業界の雲行きは怪しい。実際、オフィスで働くのと、在宅で働くのとで、売り上げが変わらないなら、高い家賃を払って広いオフィスを借りる必要はあるのかと考える経営者も多いと聞く。

ストレージに注目が集まる

「今後は都市型家庭倉庫、つまりストレージ(倉庫)の進化したビルに注目が集まるでしょう」

こう話すのは、ファンドやリート、不動産相場に詳しい西村明彦さんだ。西村さんは「日用品や食料の備蓄品の置き場所としてはもちろん、都心のマンションは戸建てに比べると狭いので、例えば都心のタワマン近くに倉庫を建てたら、すぐに予約でいっぱいになるのではないでしょうか」と話す。

西村さんが考える「都市型家庭倉庫」とは、ワンルームほどのスペースをまるごと家庭向け倉庫としてレンタルできるようなイメージだ。ターゲットは荷物の多いファミリー層、および富裕層で、必然的にタワマン近くでのニーズが高いと予測する。

リーマンショックでの教訓を生かせるか?

前述の西村さんは、「不動産業界は、リーマンショックを経験し、学んできました。同じテツは踏まないぞと思っている人は多い」と語る。

リーマンショック当時の2008年10月16日には、日経平均株価が8458円となり、史上2番目の下落率である11.4%を記録した。しかし暴落から4年が経ち、2013年3月にはリーマンショック前とほぼ同じに数値に戻っている。今回も、月日が経てばまた株価や景気は元に戻るだろうと考える人が多く、下がった今こそ仕込み時だという発想だ。

「実際にJリートが下がれば、海外マネーや外資系ファンドは一気に触手を伸ばすのではないか」(西村さん)

しかし、そんな西村さんも「円高の影響は怖い」と話す。

万一、円相場が100円を割ると観光客は激減し、輸出業も打撃を受ける。株価も下がり、同時に不動産価格も一時的に下がる可能性はある。

2020年3月12日現在

キャッシュを持っている富裕層は、そのタイミングで一気に不動産を仕込むだろうから、お金持ちがまたさらにお金持ちになるということだ。

しかし、今後さらに円高が進めば、金融緩和が打ち出され、金利は下がるだろう。金融緩和と利下げは、不動産価格上昇とセットだと考えられるが、しかし、新型コロナの影響が長期化すれば、企業の倒産が増え、ローンの支払いや家賃が滞る可能性がないとは言えない。

ロスチャイルド家の祖と言われるネイサン・メイアー・ロスチャイルドには、「ネイサンの逆売り」という有名なエピソードがある。これは、ロスチャイルド家の素早い情報伝達体制を駆使し、いち早くイギリス勝利の情報を掴んだネイサンが、イギリス国債を大量に買ったことで財を成すことに成功した、というものだ。

すでに、この状況においても悲嘆することなく、すぐに株を売ったり、銀行と話をつけたりして、不動産を仕込むためのキャッシュを用意している人もいるという。情報を掴むスピード、そして日頃からの準備が問われる潮目と言える。

Hello News編集部

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