コロナ禍のハワイから緊急不動産レポート

コロナが及ぼす混乱と悲しみは、穏やかでゆったりとした時が流れ多くの日本人が訪れるハワイにも例外なく押し寄せている。オワフ島で不動産の仲介、管理を行う「アスカ ゲートウェイ エステーツ」CO-CEO・社長の富田千賀子さんに話を聞いた。
(撮影:富田千賀子さん/インタビュー日:2020年4月20日)

富田千賀子 さん

新婚旅行で初めてハワイ島を訪れた時、着陸と同時にパイロットが語ったひと言「Welcome to Paradise!!」が忘れられず、9年後、当時3歳と4歳だった娘を連れてオワフ島へ移住。子育てをしながら不動産エージェントとして活動し、2018年、ホノルルでゲートウェイ・エステーツ社を設立した。不動産業とは「暮らしのコーディネートのお手伝いをすること」と定義し、これまで売買に携わってきた物件数は1000件を超える。ハワイ在住22年、不動産歴19年のエキスパートとして、ゴルフやレストランの手配、絶景ビューポイントなど「ハワイライフの楽しみ方」を紹介。「週刊ハローニュース」でもハワイの不動産市況と共に、現地からとっておきの情報をお届けするブログを好評連載中!

現地の状況を教えてください。

こちらハワイ州はPCR検査の準備が他州よりも遅れ、先月3月16日から始まりました。3月20日に「非常事態宣言」が出され、すべてのレストラン、お店は閉鎖されています(レストランはテイクアウトのみ可能)。また、ハワイに到着するすべての人を対象に、14日間の自己隔離も発令されています。

必須業務者、食料品などの買い物以外の外出は禁止、ビーチも公園も立ち入り禁止が発令され、違反者は罰金または逮捕という処罰を受けます。普段であれば旅行者で賑わうワイキキの通りも、歩く人の姿はなく、警察官とサーファーが目立ちます(サーフィンは許可されています)。まるでフィクション映画を見ているような光景です。4月17日の発表では、感染者は全部で553人、死亡者は9人です。良いニュースは、今までは20人前後の新たな感染者が増えていましたが、4月18日はオアフ島の新たなコロナ感染者は最低記録の2名でした。ただ、ハワイ島の2件のマクドナルドでクラスターが起きてしまい全島で21名との発表でした。

人が消えた、ワイキキのメインストリート「カラカウア通り」。普段であれば旅行者で賑わうルイ・ヴィトンも閉店しているのがわかる

観光業がメインのハワイだけに打撃は大きいですね。日本からのハワイ便は、JAL、ANA、ハワイアン航空、いずれも運休を決めています。

ホテル、ツアー会社、レストラン、ワイキキのショップなどで働く人たちは大きな影響を受けています。ワイキキのホテルは全館閉鎖しているところがほとんど。ハワイの失業保険を申請した人は24万人にのぼります。ハワイ全体で約37%の失業率です。 

オフィスから撮影した人のいないカラカウア通り

それだけ一気に失業者が増えると滞納などの心配もあります。

賃貸物件のテナントについてのコロナ対策のルールが、ハワイ不動産協会から出されました。

・家賃の延滞料を取ってはいけない。
・家賃の値上げをしてはいけない。
・契約書の条件を変えてはいけない。
・家賃が支払えないために退居命令をしてはいけない(退居通知をする裁判所もクローズ)
・電気、ガス、水道などUtilityを止めてはいけない。

上記に違反した場合、管理会社は1年の刑罰と5000ドルの罰金です。

その他については、

・賃貸契約書の条件はそのまま残る。
・テナントは家賃免除されるものではない。
・テナントは家賃を支払う義務がある。
・家賃の延滞、支払いに時間がかかることを猶予するということなので、テナント、オーナーと話し合いをして、ケースバイケースでペイメントプランを立てることが必要。

とあります。

当初、一日1万ドルの罰金と言っていたので、多少現実的な内容になったのですね。とはいえ1年の刑罰がつくとは、管理会社に対して非常に厳しい内容です。家賃滞納があった場合にはどういう手続きになるのでしょうか。

家賃が延滞したら、通常通りの「Late Payment」の手紙を出し、各テナントについて記録を残します。対応はケースバイケースで、いくらならば支払いができるか、ペイメントプランを立てて、1/2または1/3ならば支払えるのか、支払える額、支払った額、未払い額(バランス)を記録していきます。

ハワイ不動産協会からは、

・途中で解約を希望するテナントについても臨機応変に対応すること。
・解約をアクセプトするケースの場合、ペナルティーは取らずデポジットは通常の14日以内で返還するなども認めなければいけないだろう。

といった通達が来ています。

オーナーに対しては?

家賃が回収できない大家さんに対する対処は特にないのです。

大家さんがローンを抱えている場合、テナントの家賃が未払いのためローンが支払えないという場合には、金融機関から支払いの猶予があります。そちらを利用するようにとのことでした。

弊社も、4月1日の期限の家賃回収についてはとても心配していましたが、延滞の連絡は1件あったのみでした。しかしながら家賃の値下げ交渉は数件あります。また、コロナ問題が起こる前から家賃を滞納して居座っているテナントがおり、退居通知を出していたのですが、そういう人についても退去命令はもう出せないということになりました。 

御社は不動産の管理業務もメインにされていますが、管理についてはいかがでしょうか。

不動産業の管理業務についても在宅勤務を基本としています。しかし、州が決めた必須業務に含まれているため、許可書を持参されば賃貸管理物件や別荘管理物件のチェックのための外出が許可されています。コンドミニアムによっては、部外者の立ち入りを禁止しているところもあります。

売買の方はどうでしょう。

不動産売買の動きは鈍く、セールスチームは非常に辛い状況です。劇的な値下がりはまだ目立ってはいませんが、この状態が短期であることを願っています。物件案内はほぼできない状態なので、ヴァーチャルビデオなどをみんなが使い始めています。

穏やかなハワイの雰囲気がなくなってしまいそうで怖いです。

お天気、自然はいつものハワイの風景と変わりありません。ただ、とにかく人と車が少ないです。私も在宅ワークになって初めて、夕方から夜の時間が長いことに気づきました。通勤時間がなく今は時間が流れるのがゆっくりになっています。

他の人も同じなのか、スーパーの棚から小麦粉がなくなるほど、みんなデザート作りや、料理に凝っていて、Facebook、Instagram、Textなどで、テイクアウトも含めてうちごはんの自慢大会です。笑

今はもうマスクをしていないとスーパーに入れません。けれど、みんなハワイらしいパイナップルや花模様のマスクを作り、色鮮やかなマスクをすることで、少しでも明るい気持ちを保とうとしています。

トロピカル模様の手作りマスク

千賀子さんの娘さんも、フロリダのICUでナースとして懸命にコロナウイルス患者さんの医療に当たっています。1日も早い収束を祈るばかりです。

次女もですが、前線で勤務されている医療従事者のみなさんには本当に頭が下がる思いです。

コロナ以降、様々なことが変わりました。先日、オアフからカウアイ島に旅行に行ったカップルがいてホテルに直行しなければならないのに、途中でスーパーに立ち寄ったところで逮捕され、名前入りマグショットがニュースで報道されました。今まで普通だった行動が罪になる、コロナの影響で変わるライフスタイルを「NEW NORM(New Normal)」と言うのですが、衣食住、人との付き合い、旅行、教育……。どんな「New Norm」になっていくのか。ハワイは変わらずにいて欲しいです。

Hello News編集部 吉松こころ

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