女性が活躍できる社会を目指す「第23回不動産女性塾」レポート

講師の消費者庁長官・伊藤明子さん

23回目を数える不動産女性塾(塾長:北澤艶子さん)が、9月29日火曜日、明治記念館1階の末広の間で開催された。

この日のメインイベントは、2017年に国土交通省では初の女性局長となり、内閣官房内閣審議官を経て、2019年から消費者庁長官を務める伊藤明子さんの講演で、全国から50名の参加者が集まった。

伊藤さんの講演テーマは、「消費者目線で経営を考える」。消費者トラブルは世の中の世相を表していると考え、実際に届いた消費者の話をもとに今後の経営を考えることが今の時代、何よりも大切なことだと語りかけた。顧客はもちろん従業員や地域社会まで考えて経営をすれば、結果としてそれが回り回って会社のためになるという。

同時に、消費者自身に対しても変化を訴えた。

最近、高齢者がよく遭う被害が、送りつけ商法。マスクなどが勝手に送られてきて、それを受け取ってしまうことで、後日、法外な請求が届いてしまうという。一方、若者に多い被害は、SNSなどのネット上で儲け話に騙されるケース。中には50万円の借金を作ってしまった人もいたという。

こういった手口に簡単に乗らない防御術も問われている。

「もし分からないことがあれば、誰かに相談したり、頼ったりすることが重要」と話しつつ、「なかなかそうもいかないのが今の社会の現実」と伊藤さん。

日本では今、単身世帯や共働き世帯が増え、働く高齢者や女性の数も年々増加している。結果、昼間は地域に人がいなくなり、どんどん孤立する人が増えているのだという。

すると、どういう事態が起きるかというと、トラブルが発生した際、家には誰もおらず、相談する相手がいない。近くに「それって変じゃない?」と言ってくれる友人もいない。つまり、誰かに騙されやすくなる環境ができやすい時代になっている。これらのトラブルを未然に防ぐために、伊藤さんは「信頼できる人ときちんと交流できるリアルの場を持っておく」ことが大切だと話した。

災害に便乗した悪質商法も増えているという。台風の後に、「保険会社から来ました」とセールスマンがやってきて、「保険会社が対象にしないようなものも保険の請求ができるので、その立ち合い料をください」と言葉巧みに近寄ってくるそうだ。

他にも、住宅リフォーム業者には悪質な人も多いと言い、点検するだけならいいが、見積もりを同時に取ってくるような業者は要注意だと話す。以前、小屋裏、床下にリフォームが必要だからと何回も来ては工事して、計3000万円をだまし取ったリフォーム業者がいたそうだ。リフォームは工事の証拠が残らないため、どこをどのように修理したかという記録を取っておかないと、消費者庁が悪質業者を処分することは難しいという。

最後に伊藤さんは「これからの経営は、消費者のことを一番に考えなくてはなりません。皆さんは既にそんなことはご存知だとは思いますが、多くの声に耳を傾け、改めて考えてみてください。長く商売するにはそういう風に考えないといけません。もちろん、消費者自身も自立していく必要はあります」と話し、1時間にわたる講演を締めくくった。

次回は、11月18日水曜日に明治記念館1階の曙の間で開催される。講師に住宅評論家の本多信博さんを招き、「住まい悠久」と題したセミナーを予定している。

Hello News編集部 鈴木規文

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