<後編>賃貸業界よもやま話

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業界DEEP④

「税理士に8億円所得隠し容疑 金地金使った税還付を指南」

5月21日付の朝日新聞が報じたニュースの見出しだ。記事には、消費税還付方法を指南して得た報酬を売り上げから除外するなどし、計8億円超の所得を隠したとして、東京国税局査察部は、東京都府中市のS税理士が経営するコンサルティング会社2社を、所得税法と法人税法違反の容疑で東京地検に告発したとあった。

このニュースが出た後、早速「国税庁にその手(節税)があったか!」と言わせることを生きがいとするあるメガ大家さんから連絡があった。

「こちらの税理士さん、国税庁がヘッドハンティングしたらどうでしょう。所得隠しの10倍の80億円の所得税違反を挙げたら無罪放免、なんていったら税収アップ間違いなし。さらに報酬として3%、2.4億円を差し上げたら、ご本人も本業を上回る収入になるはず!」

 まさに「その手があったか!」だ。

業界DEEP⑤

「コロナ禍中、熱海駅徒歩10分のNECの保養所を中国人の投資家が買ったそうです。企業が手元資金を増やそうとして売りに出した様々な物件を、コロナ禍だろうがなんだろうがどんどん買っているのが中国人。逆に、この間、日本人がオーストラリアの山を買ったとか、フランスの城を買ったなんて話は全く聞こえてこない。日本の不動産会社は、世界で一番になろうという気がない」

かつてマイクロソフト本社で働いていたという、ある日本人技術者に言われた言葉だ。

「う〜ん」、思わず唸ってしまった。車や家電には世界で一番を取ろうとしている会社はありそうだけど、不動産業界ではそんな話を聞いたことはないなぁ。

いや、一社ある。オープンハウスだ。「アメリカに家を持とう」と謳っているくらいだ。2年前にはハワイで10年以上トップセールスの記録を維持していたサチ・ブレーデン社長のサチハワイ総合不動産会社をM&Aしたし、知り合いの大家さんもオープンハウス経由でダラスに投資用不動産を20棟買ったと話していた。

そのオープンハウスだが、コロナ禍真っ只中の5月8日、関西のプレサンスコーポレーションの株式約30%を取得し、いつの間にか筆頭株主になっていた。ちなみにプレサンスコーポレーションの創業者で昨年12月に逮捕された山岸忍前社長は、今も勾留されたままだという。山岸氏がかつて勤務していた大京のOBらによると、「保釈金はいくらでもあると思うのですが、山岸さんは自分の非を絶対に認めたくないんだと思う。意地だと思う」とのこと。

そんな関西のドンと呼ばれた社長が築き上げた帝国のような会社を買ってしまうあたりが、ある意味でオープンハウスらしい。2020年9月期の連結営業利益は、コロナの影響があったにもかかわらず、8期連続過去最高の売り上げをたたき出した。売上高は5700億円、経常利益は770億円、純利益は590億円で、グループ売り上げ1兆円を視野に入れる。

多くの戸建て販売会社が「コロナで購入マインドが下がった」とか「今は借金をしたがらない」と話していたが、同社の決算概要を見ると「書斎を確保しやすい戸建てが選ばれた」とか「家族と過ごす時間が増え必然的に家のことを考えるようになった」とか至って前向きだ。

10年くらい前、渋谷の宮益坂を通るたびに呼び込みをしていたサンドイッチマンの格好をした人たちは、確かオープンハウスの社員だったと記憶している。もはやそんなイメージは全くない会社になっている。

業界DEEP⑥

「東京のN不動産から賃料の値上げを言われました」
「え、この時期にですか?」
 
ちょうど更新の時期を迎えた東京都中央区、地下鉄駅徒歩1分の事務所ビルに入居している社長が頭を抱えているという。コロナの影響で家賃に対しては多くのテナントが減額を要求しているのに、あえてこの時期で値上げとはどういう意図があるのだろうか。

あるメガ大家さんはこう分析した。

「N不動産は、賃貸シェアオフィスをシリーズで展開しています。もしかすると退去してもらってその後の事務所を小ぶりにして貸し出したいのではないでしょうか。中小も大企業も事務所は縮小傾向にありますから。だけど、立ち退き料は払いたくないから値上げてして自ら出ていくように仕向けているのでは?」

なるほど、それが本当だとしたらかなり賢い(?)やり方だ。

Hello News編集部 吉松こころ

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