12月15日施行!サブリース新法の広告等における規制内容を解説

2020年6月12日に発表された賃貸住宅管理業法によって、サブリース事業者に対して法的な規制が行われた。ではどのように変わったのか、詳しくみていきたい。

そもそもサブリースに対し、この度の法規制が行われたきっかけとして、サブリース会社とオーナーとの間で多発した家賃保証等の契約条件の誤認を原因とするトラブルが挙げられる。

長年にわたりこの問題の代表格と言われてきたレオパレス21だけでなく、記憶に新しいところでは、2018年1月に事件が明るみに出た「かぼちゃの馬車」問題があった。

2017年当時、売上高300億円で急成長中だったシェアハウス運営会社のスマートデイズが「30年間は家賃保証します。利回りは8%以上です」との謳い文句で、サラリーマンにシェアハウスを購入させた後、入居率が低いことを理由に、一方的な賃料減額やサブリース契約の解約を迫った。購入した個人投資家は700人以上で、多くがローンで購入したことから賃貸経営が立ち行かなくなり、個人破産する者も出て社会問題化した。その後、スマートデイズは1億6000万円の負債を抱え、経営破綻している。

では具体的にどのような規制が行われたのだろうか。

※国土交通省「サブリース方式をお考えの方向け」チラシより抜粋
目次

サブリース事業者・勧誘者に対する禁止事項

賃貸住宅管理業法の法制化にともない、ハウスメーカーなどを含むサブリース事業者と、マスターリース契約(一括借り上げ)の締結についての勧誘を行う者には次の行為を義務付けた。

誇大広告等の禁止(第28条)

マスターリース契約の条件について広告する際、サブリース事業者がオーナーに支払う家賃や家賃の見直し時期、負担割合、減額、契約の解除について、事実に相違のある表示や優良であると勘違いさせる表示を禁止する。

なお、「家賃保証」や「空室保証」というように、一定期間、一定の家賃を支払うことを約束する言葉を使用する際、もし契約期間中に家賃を減額する可能性があるとすれば、同じ広告内に必ずその旨を明記する必要がある。

●国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」にある、誇大広告、優良誤認にあたる具体例(一部抜粋)

<サブリース業者がオーナーに支払う家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並 びにその変更に関する事項>
・契約期間内に定期的な家賃の見直しや借地借家法に基づきサブリース業者からの減額請求が可能であるにもかかわらず、その旨を表示せず、「○年家賃保証!」「支払い家賃は契約期間内確実に保証!一切収入が下がりません!」といった表示をして、当該期間家賃収入が保証されているかのように誤解されるような表示をしている


・「〇年家賃保証」という記載に隣接する箇所に、定期的な見直しがあること等のリスク情報について表示せず、離れた箇所に表示している


・実際は記載された期間より短い期間毎に家賃の見直しがあり、収支シミュレーション通りの収入を得られるわけではないにも関わらず、その旨や収支シミュレーションの前提となる仮定(稼働率、家賃変動等)を表示せず、〇年間の賃貸経営の収支シミュレーションを表示している


・実際は記載の期間より短い期間で家賃の改定があるにもかかわらず、オーナーの声として〇年間家賃収入が保証されるような経験談を表示している


<賃貸住宅の維持保全の実施方法>
・実際は休日や深夜は受付業務のみ、又は全く対応されないにもかかわらず、「弊社では入居者専用フリーダイヤルコールセンターを設け、入居者様に万が一のトラブルも24時間対応しスピーディーに解決します」といった表示をしている


<賃貸住宅の維持保全の費用の分担に関する事項>
・実際には毎月オーナーから一定の費用を徴収して原状回復費用に当てているにも関わらず、「原状回復費負担なし」といった表示をしている


・維持保全の費用について、実際には、他社でより低い利率の例があるにもかかわらず「月々の家賃総額のわずか○%という業界随一のお得なシステムです」といった表示をしている


<マスターリース契約の解除に関する事項>
・契約期間中であっても業者から解約することが可能であるにも関わらずその旨を記載せずに、「30 年一括借り上げ」「契約期間中、借り上げ続けます」「建物がある限り借り続けます」といった表示をしている

不当な勧誘行為の禁止(第29条)

サブリース事業者がマスターリース契約を勧誘する際、オーナーに支払う家賃の条件や変更、費用負担に関する事項、契約解除や更新に関する事項など、故意に事実を告げなかったり、虚偽の内容を告げたりする行為を禁止する。なお、サブリース事業者だけでなく、既存オーナーや親会社、建築会社などの勧誘者も対象となる。

●国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」にある、不当な勧誘行為にあたる具体例(一部抜粋)

<故意に事実を告げない行為>
・将来の家賃減額リスクがあること、契約期間中であってもサブリース業者から契約解除の可能性があることや借地借家法の規定によりオーナーからの解約には正当事由が必要であること、オーナーの維持保全、原状回復、大規模修繕等の費用負担があること等について、あえて伝えず、サブリース事業のメリットのみ伝えるような勧誘行為


・サブリース契約における新築当初の数ヶ月間の借り上げ賃料の支払い免責期間があることについてオーナーとなろうとする者に説明しない


<故意に不実のことを告げる行為>
・借地借家法により、オーナーに支払われる家賃が減額される場合があるにもかかわらず、 断定的に「都心の物件なら需要が下がらないのでサブリース家賃も下がることはない」 「当社のサブリース方式なら入居率は確実であり、絶対に家賃保証できる」「サブリー ス事業であれば家賃 100%保証で、絶対に損はしない」「家賃収入は将来にわたって確実 に保証される」といったことを伝える行為


・近傍同種の家賃よりも著しく低い家賃であるにもかかわらず、「周辺相場を考慮すると、 当社の借り上げ家賃は高い」といったことを伝える行為

特定賃貸借契約締結前、契約締結時の重要事項説明(第30~31条)

マスターリース契約前に、サブリース事業者が家賃や契約期間などを記載した書面を交付して説明する。その際、説明するのは賃貸不動産経営管理士など専門的な知識を有する者が望ましいとされる。

●国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」にある、重要事項説明書、特定賃貸借標準契約書に必要な記載事項(一部抜粋)

1.マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所
2.マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
3.契約期間に関する事項
4.マスターリース契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項
5.サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
6.サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
7.マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
8.損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
9.責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容
10.転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
11.転借人に対するサブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の周知に関する事項
12.契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
13.マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項

罰則および処分規定

これらの禁止事項を行ったサブリース事業者、および勧誘者は、罰則として「6カ月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金、又はこれを併科」、「50万円以下の罰金」、「30万円以下の罰金」が科せられる。また、加えて行政処分として、「指示処分」、「業務停止命令」「勧誘停止命令」も下されることになる。

Hello News編集部 鈴木規文

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