<後編>アパートの掃除はご近所さんに頼もう!

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「どーもどーも。サラリーマンと芸人、二足のわらじコンビです!!」

月2回、富治林社長は、舞台に立っていた。

「まだまだ力不足だったのでコンビ名は伏せたい(笑)」と話すが、実はお笑い芸人だったのだ。ボケ役だ。

右側が富治林社長

ネタをするのは新宿の小さな小屋や路上が多かった。控え室は野ざらしで雨の日や冬の寒い日は辛いものがあったが、それでも3年続けた。

きっかけは、高校の同級生で3年間テニスでコンビを組んでいた相方が、歌手になりテレビC Mに出ているのを見たことだった。相方の名は、岡崎体育。

「好きなことをしながら人を楽しませることって、めちゃくちゃすごい!」

衝撃が全身をかけめぐり、自らはお笑いの世界に飛び込んだ。とにかく自分でなんでもやってみないと気が済まない性格がここでも発揮された。

笑いの世界での修行を通じ、舞台に立つこと、人前に立ち自分の思いを伝え、注目を集める術は自然に身につけてきたのかもしれない。

新しい事業を組み立て、投資家にプレゼンテーションする「Global Geek Audition」に出場した時、彼は見事にグランプリを受賞している。

与えられたプレゼン時間は5分。この中で投資家に対しサービスの社会性や新規性、成長性を訴えるスキルが求められた。挑戦的なベンチャースピリッツを見せつつ、細部まで丁寧に説明しなければならない。また、参加にあたっては、約6ヶ月間のサービスの作り込みと選考基準の突破というハードルもあったが、これらもクリアした。その上で、富治林社長は、16チームの参加者を抑えてトップの座を手にしたのだ。

リアルとオンラインで180名が聴講した

3月末までに累計500棟のマッチング

「今は、COSOJIを知っていただくため、様々なメディアに取り上げていただくことを大切にしています。継続してアプリ開発に人的リソースと資金の投資を続けていて、営業への投資をあまりかけれないので」(富治林社長)

最近の活動の中心は、自分自分と軽作業ワークシェアサービス「COSOJI」の売り込みだ。

業界紙やネットメディアなど、様々なメディアの取材を受けている。前述の「Global Geek Audition」での優勝や、ジモティからの出資など、話題になるニュースは持っている。取り上げられる機会が増えれば、それが、依頼者(賃貸オーナーや管理会社)とワーカー、双方からの問い合わせ増加につながる。実際、それぞれからの申し込みは増えていて、3月末までには、累計500棟のマッチングを行う予定だ。

富治林社長は、ある賃貸オーナーと話した時に驚いたことがあった。それは毎月の清掃代に9000円を支払っていると言われたことだった。

「僕らは1900円~でできる設計にしていて、500円利益をもらえば1500円くらいを地域のワーカーさんにお渡しできます。物件によってですが60分くらいで1500円だと高単価な仕事だと思うので、みんながハッピーになりやすいと考えています」

「自分たちが大切にしていることは、とにかく「現場ドリブン」です。自分たちが経験し、実際に課題だと感じていることを大切にしています。また、現状に課題を感じている方々や、実際にCOSOJIを使っていただいてる方々との会話をとても大事にしています」

システムで上手く回し、地域にお金を落とすことができれば、不動産業務を通じて地産地消で経済を回せるのではないか。立ち上げたばかりのベンチャーを支えているのは、そういった強い思いだ。

「COSOJI」のマッチングの流れ

同時に複数のワーカーが手を挙げた場合、現在は一番早く手を挙げた人が仕事を受けやすい仕組みになっているが、他にも過去の実績をもとに受けやすい仕組みも取り入れいている。清掃の内容はマニュアルを作成し、どのワーカーが勤務しても一定の品質を確保しやすいようにしている。

掃除の内容については、依頼者がコメントをできるフィードバック制度を作った。満足できなかった場合には、ワーカーを変更することも可能だ。

「フィードバック制度では、清掃が終わった後、依頼者さんがコメント書いて“感謝の気持ち”や”もっとこうしてほしかった“などと言えるようになっています。また他のワーカーさんにも一部共有することでワーカーさんのモチベーションが上がりやすかったり、サービスを改善しやすいように工夫しています。」

もちろん、ワーカーが物件を選ぶことも自由だ。

「一度頼んだあと、ワーカーさんを代える、という選択もできますし、利用しないという判断をすることもできます。けれど今のところやめた方は少なく、全体で5%弱です。」

管理会社からの依頼も増加

最近は、オーナーからだけでなく、管理会社から依頼を受ける機会も増えている。

「私自身、管理会社にいたときに強く感じでいましたが、管理会社さんも清掃員の人手不足も深刻です。ですから、不動産の手が届きにくいところとか困りごとを解決するサービスとして、オーナーさんも管理会社さんもご利用いただけるサービスにしています」

今後は、サービスのクオリティ向上が課題だ。

「スターバッグスみたいに使ってることを有意義だとかかっこいいとか感じられるサービスにしていきたいです。“COSOJI使ってるの、おしゃれじゃん”と言われたら、働く人のやりがいにもつながるかなと思うから」

今後ワーカーのネットワークが広がれば、将来的には日常の清掃だけでなく、災害時の対応にも寄与できると思っている。

「何か大きな災害が起きたときは、管理会社の社員さん自身も被災しているケースがあり、飛散したゴミの整理とか片付けとかすぐに対応できないこともあるかと思います。それを、物件の近くに住んでいる人がやるということです。それを保険料でできないかと保険会社さんとも相談しています」

「COSOJI」の事業はWin-winのビジネスだが、当面の課題は、資金繰りと社内の人材の確保だ。

アプリ開発、地域再生、ソーシャルビジネス、資金調達の成功、新進気鋭の30歳社長といった言葉だけ見ると、今どきの会社に見えるが、実際には、物件の清掃や草むしりなど泥臭い仕事を担う。

その現場の大変さは、トップの富治林社長が一番わかっている。現場上がりの社長だからこそ作れるスタートアップの今後に、大いに期待したいと思う。

Hello News編集部 吉松こころ

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