乙種防火管理講習を受けてきた!

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防火管理者講習に申し込む

1カ月ほど前の3月某日、ハローニュース編集部に東京消防庁から1通の封書が届いた。

そこには、「防火管理者未選定、防火管理に係る消防計画未作成のため、至急の対応をお願いします」と書かれてあった。

「はて、なんのことだろう」と、急ぎ問い合わせ先に電話すると、どうやら当編集部の事務所が入るビルは、「特定用途」というビルに該当し、1部屋につき1人の防火管理者を選定する必要があるとのことだった。そして、防火管理者になるには、乙種防火管理講習を受けなくてはならないということを聞いた。

なお、「特定用途」の定義は、飲食店が入居、かつ全事務所の従業員数を合わせて30人以上が収容されているビルのことだ。

東京消防庁から届いたチラシより

乙種防火管理講習は、朝9時20分から夜17時過ぎまでで、さらにテキスト代として1500円を徴収されることに不満はあったが、築50年とはいえ、リフォーム済みで愛着のあるこの事務所を、こんなことで追い出されてしまってはたまらんと思い、最寄りの消防局で申し込みを行った。

編集部には3~4人のスタッフが勤務しているが、私一人だけが男性ということで有無をいわさず講習を受けるのは私に決まった。不満を言いたい気持ちはグッと抑えた。

一日がかりで講習を受けてきた

講習当日、講習会場である錦糸町の防災センターには朝9時に到着した。

9時20分の定刻になると、120人ほど入れる教室の座席の95%は人で埋まっていた。講習に出席しているのは、50代以上と見受けられる男女が6割以上だろうか。これから事務所を借りるために講習を受けている人が多そうだと感じた。

また、会場ではしきりに「コロナ対策は万全に~」との案内が流れていたが、隣の席との距離は薄いアクリル板を挟んで30センチほど、通路を挟んだ席とは60センチほどの距離はあったが仕切りはない。クラスターが発生した際の連絡先として携帯の電話番号も書かされるなど、かなりの不安に襲われた。

講習が始まると、遅刻したら講義に出席できない、講義中にスマホを見たり、途中で居眠りしたりすると追い出されるなど、まるで大学入試の試験会場にあるような注意文が読み上げられた。講義の最後にテストがあることもその時に知らされ、15問のうち合格基準をクリアしないと、居残り補習があるとの話も受けた。会社を代表して講義を受けている身として、居残り補習はかなりのプレッシャーだった。

そんな状況の中で長丁場を戦ってきたわけだが、終わってみれば講義自体はとてもシンプルなもので、テストも普通に考えれば間違いようのないものが多かった。長時間、椅子に座っていることによる腰痛さえ耐え忍ぶことができれば、誰でも取れるような内容だ。途中、最前列に座っている若い女性が居眠りで注意されていたが、特に追い出される様子はなく、本日出席した人は全員合格となった。

防火管理者講習の修了証は当日受け取ることができた

過去の火災事例から考える

講義内容でもっとも興味を惹かれたのは、過去の火災事例だ。

死者118人を出した昭和47年の「千日デパート火災」、ホテル火災で戦後最大の死者数(45人)を出した昭和55年の「川治プリンスホテル雅苑火災」、私が覚えているところだと平成13年に歌舞伎町の雑居ビルで発生した「明星56ビル火災」について、出火原因、出火時の状況・対応、問題点が書かれており、これらは防火対策を怠ったがため、起こるべくして起こった火災事故だったのかと知った。

例えば「明星56ビル火災」では、後に消防庁が調べたところによると、避難経路としての役割を果たすはずの階段に多くの可燃性物品が置かれ、延焼拡大の一因となっていたことが分かった。防火戸付近にも荷物が置かれており、火災発生時に防火戸を閉鎖できず、急速に煙が拡散してしまっていた。また、ほとんどのテナントで防火管理者が選任されておらず、消防計画も未提出だったという。

その結果、自動火災報知設備が壊れていたことに誰も気づいておらず、火災発見の遅れや初期通報、避難誘導などが行われないまま、多数の犠牲者を出してしまった。

そこで私の脳裏をよぎったのは、レオパレス21の建築基準法違反による界壁施工不備問題だ。前述の「明星56ビル火災」では、建物所有者に禁錮3年(執行猶予5年)の判決が出た。また、各テナントの経営者も執行猶予付きで禁錮2~3年の判決が下されている。万一、レオパレスのアパートで火災が発生し、界壁がないことで死者が出ていたとしたら…。仮に、界壁問題があったことを知らずに賃貸オーナーとなったとしても、建物所有者としての責任を問われ、裁かれる側になるのだろう。

防火管理者の資格を得た私は、これから当事務所の消防計画書を作成する予定だ。もしもの事態を想定し、トラブルが発生することのないよう、しっかりとした計画書を作成したい。編集部のみんなが安全に避難できるよう、防火管理の責任者として、その責務を全うしていこうと思った。

Hello News編集部 鈴木規文

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