62社128名が参加した「ちんたい研究会」
ちんたい研究会は5月13日(木)、「時代の一歩先を行く日本エイジェント流 経営戦略について」をテーマにした勉強会を、オンライン上で開催した。
愛媛県松山市にに本社を構える賃貸管理会社、日本エイジェントのサービスの仕組みや店舗政策、東京進出戦略などについて、同社の社員が解説する形で行われ、全国各地から62社128名がWeb会議システム「ZOOM」上に集まった。
社名 | 株式会社 日本エイジェント |
代表 | 乃万恭一 |
従業員数 | 149名 |
管理戸数 | 13,422戸(2020年3月時点) |
店舗数 | 12店舗(お部屋探し物語/スタッフレス店舗) |
主な事業 | 賃貸不動産の総合管理業/不動産に関する資産運用コンサルタント業/不動産の賃貸・売買及びその仲介業/リフォーム事業/損害保険代理業/システム開発・販売事業 |
特徴 | 1981年に愛媛県松山市で創業。お困りごと対応専門部署「レスQセンター」の設立、不動産の無人店舗「スタッフレスショップ」のシステム構築など、全国に先駆けて新しいサービスを誕生させるとともに、全国の不動産会社にそのノウハウを提供している |
ちんたい研究会について(ホームページより)
全国賃貸仲介管理業のちんたい研究会とは、賃貸仲介管理業の経営者の方を中心に有志を募り、先進的取組みを共有することを目的としたものです。会では、先進企業からいろいろな経営ノウハウや戦略・戦術を学ぶことに加え、地域・FCを超えた経営者間での『気軽に相談し合えるネットワークづくり』も大事な目的としています。ベンチマークの後、毎回親睦会を開催し参加者同士の交流を深めています。全国賃貸仲介管理業ベンチマーク会は、株式会社クレシオが運営しています。既に30回の開催実績があり、参加者数はのべ1,000名を超えるに至っています。
皆で学び、共に成長を
勉強会の主催者であるクレシオの木村勉さんは、以前、日本エイジェントの乃万恭一社長からこんな言葉をかけられたのを強烈に記憶している。
「賃貸業界にもIT企業が続々と進出している。街の本屋さんみたいに、不動産会社もいずれ街から消えてしまう時代が来るだろう」
この言葉を聞いたとき、木村社長は危機感を覚えながらも同時にこう思った。
「やる気のある地場の不動産会社同士が助け合って、強みや弱みをお互いに補完できるような関係性を作れれば、これから先IT企業による不動産業への進出が相次いだとしても、きっと対抗できるのではないか」
そこで、独自のDX戦略を進める日本エイジェントの取り組みを皆が学び、共に成長できる場を作ろうと、今回の勉強会を開催するに至ったと話す。
勉強会は3部構成で次の通り。
乃万社長が語る「DX武装」
1部 人材育成と事業戦略について乃万春樹専務による解説
2部 仲介の現場から非対面時における仲介ポイントと外国人仲介について
3部 愛媛レスキューセンターから管理の現場で今起きていること
本記事では、特に乃万社長の言葉にスポットを当てて、紹介して行こうと思う。
金言① 「コロナ禍に不動産業界の進化のヒントがあるような気がした」
乃万社長は、コロナ禍で同社の売り上げが昨対比20%ダウンしたことを憂うより先に、コロナから学ぶべきものがあるのではと考えた。
「コロナの勢いが弱ってきたら、今度は変異株に進化して私たちを苦しめている。私たち不動産業界も進化するには、変化を繰り返すことが重要なのではないか」と言い、問題は「何をどのように進化させるか」だと問いかけた。そのヒントはコロナ禍におけるデジタル対応にあると乃万社長は考えた。
「コロナの発生源と言われた中国は、いち早くコロナを抑え込み、すでに経済成長がプラスに向かっています。今ではアメリカを脅かすほど急成長している中国ですが、そもそも2010年までは日本よりGDPが低かった。なぜ日本は抜かされてしまったのかと考えると、それはやはりITの力ではないでしょうか。中国は国家戦略としてデジタル化を進めています」
乃万社長は、各国における軍事面でのIT格差(サイバー部隊)を例に挙げた。中国のサイバー戦略部隊は17万5000人に対して、日本はたったの220人だという。
「コロナによって日本がIT後進国だったことが表面化された」
賃貸業界のデジタル化の遅れを引き合いに、「デジタル化が進まずに日本の成長が止まってしまったことと同じことが賃貸業界で起きる可能性がある」と語った。
金言② 「賃貸業界の仕事の大半は、いわば不動産データを扱う業務です」
乃万社長は、だからこそ、賃貸業界という昭和っぽいネーミングから、不動産DX業界とネーミングを変えるべきではと問いかける。
そして、賃貸業界は「社員数や店舗数の拡大競争から、DX化の競争へシフトしているという認識を持っているかが重要だ」と訴え、「そもそもコロナ禍で余儀なくされた非接触型のリモート営業は、コロナ前にも推進してきた企業はたくさんある。リモート営業がなるべくしてなった当然の流れだ」と続けた。
経済産業省の予測によると、このデジタル環境が今のまま続けば、2025年から2030年で、年間12億円の損失が生じるという。経済産業省自ら「このままでは日本はDX競争の敗者になる」と公表している実態がある。
給付金の配布、ワクチン接種の予約、もはやオワコン扱いの新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)をとっても、日本の遅れは明らか。
一方で、経済産業省は、「今の時点でDX化を推進することができれば、2030年の実質GDPで、130兆円のアップが期待できる」とも報告している。
金言③ 「私たち不動産会社はまだ間に合います。今からでも前向きにDX化に取り組んでいけば、時代に追いつくことができます」
参加した多くの管理会社が息をのむほど、他を圧倒しているような日本エイジェントの活動と姿勢だが、乃万社長の口調はいつだって穏やかだ。そして業界全体のことを思っている。
「1社だけで革新的なDX化に取り組むのは大変です。その場合は、他社さんとパートナーとしての連携が近道かもしれません。DX化の推進を図れば図るほど、人間にしかできないこと、人がやるべきことがさらにクリアになってくるでしょう。6月の賃貸管理業法の制定で、今まで以上に管理内容の質の競争になってくることは間違いありません。そこに事業を集中させれば、お客様の満足度があがり、業績アップにつながるのではないかと思います。本日の勉強会がほんの少しだったとしても皆様のお役に立てればと思います」
乃万社長はこのように締めくくり、同社社員にバトンタッチ。その後、1部から3部に分かれて日本エイジェントの取り組みが紹介された。
店舗からの中継やドローンを使った映像配信、現場で働くスタッフへのインタビューなど、次に次に投影される映像は、どれも業界の二歩も三歩も先をいくものだった。
Hello News編集部 鈴木規文
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