レオパレスの賃貸オーナーで構成されるLPオーナー会代表の前田和彦さんは、6月2日、レオパレス21が借地借家法32条3項に違反しているとし、名古屋地裁の記者クラブで会見を行った。
レオパレスは、同社とサブリース契約しているAさんに対し、一方的に家賃の減額を迫り、その協議中にもかかわらず減額した家賃をAさんの口座に振り込んできたという。これは、借地借家法32条3項にある「家賃減額が正当とされる裁判結果が出るまでは、協議前の家賃で振り込むこと」に抵触している可能性がある。
会見で前田代表は、「全国のレオパレスオーナーには、不当な家賃減額や協議中における減額家賃での振り込みは、不当行為だということを知っておいてほしい」と訴えた。
借地借家法32条3項
建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを変換しなければならない。
LPオーナー会は同日の6月2日、国土交通省にレオパレスの違法行為を報告すると、これに対して国交省側は「省内で協議する」と回答した。Aさんの代理人を務める花井淳弁護士は「家賃減額についてAさんは合意していないため、これは完全に借地借家法32条3項の違反にあたります。レオパレスにはその説明責任と家賃減額前との差額7万5560円を支払う義務がある」と言い、今後は法的手段も含め、検討していくと話した。
発端となったのは、2カ月前の2021年4月7日に、レオパレスからAさんに届いた1通の手紙だった。
そこには、「周辺家賃相場と比較した結果、Aさんの所有物件の家賃を減額したい」といった趣旨の内容が書かれていた。Aさんがレオパレスとサブリース契約しているのは1棟20戸の賃貸アパート(住所、築年数については未公表)で、月額の保証費用は76万5800円だったが、4月以降は1戸あたり3778円の減額となり、月額69万240円にすると書かれていた。
Aさんがこれに応じずにいると、4月22日、再びレオパレスより、通知が届く。「借地借家法32条第1項に基づく賃料減額請求権を行使しました。2021年4月分以降に支払う月額賃料は、減額した金額でのお振込みとさせていただきます」とあった。
借地借家法32条1項
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
その後、AさんはLPオーナー会に相談し、5月7日にAさんの代理人である花井弁護士から減額に応じられない旨の通知書を郵送してレオパレスに抗議。しかし、レオパレスから返答はなく、4月分の家賃の振り込み日の5月17日、減額された69万240円がAさんの口座に振り込まれた。
花井弁護士は、レオパレスのこの行動に対して再び抗議文を送ったが、回答期限と設定した5月28日までにレオパレスからの返答は得られなかった。
「レオパレスも借地借家法32条を理解しており、協議が調うまでは減額提示前の家賃で振り込みしないと違法になることは認識していたはずです」(前田代表)
これまでの経緯
前田代表はこうした状況に対し、「レオパレスは昨年9月、アメリカのファンドから資金援助を受けましたが、それでも赤字が続いている。私たちオーナーに、なし崩し的に家賃減額を迫っているのは、そうした事情があるからではないでしょうか」と語った。
レオパレスは昨年11月、米投資会社「フォートレス・インベストメント・グループ」から計572億円の支援を受けたが、経営再建の見通しが立たず、2021年3月期の連結最終損益は236億円の赤字になった。2021年3月末の自己資本は84億円で債務超過に陥ったことを公表している。
賃貸住宅管理業法が昨年6月に成立、同年12月にサブリース部分が施行され、サブリース会社がオーナーや入居者とのトラブルを未然に防ぐことを義務づけられて間もない。にもかかわらず、レオパレスは赤字を解消すべく、オーナーへの家賃減額を至上命令に掲げて、なりふり構わぬ姿勢を見せているということか。
Aさんに対する家賃減額の通知手段は手紙だけで、ファンド側から必殺仕事人のような減額交渉のプロが派遣されるわけでもないようだ。いまだに施工不備物件の補修工事完了率が約23%(5月末時点)という状況下、レオパレスは新たな火種を生み出そうとしている。
HelloNews編集部 鈴木規文
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