時価総額が10日で134倍に!起死回生した倒産寸前企業はなにをした?!

東京五輪真っ只中、世界中が東京に注目している今月、中国国内でオドロキのニュースが飛び交った。なんと、わずか10日ほどで時価総額が50億円から6700億円(2021年7月現在)、134倍になったという企業があったのだ。

倒産寸前だった中国のスポーツウェアブランド「Erke(アーク)」に起きた奇跡とは何か?

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一夜にして有名企業に

ことの始まりは今年7月20日だった。中国河南省で観測史上最大の記録的大雨が発生し、鄭州市では1時間の雨量が200ミリを超え、死者は302名、行方不明者は50名にのぼった(8月2日時点)。このニュースは日本でも大々的に報じられた。

Weiboで取り上げられた河南省大雨の様子

多くの中国国民が悲しみに暮れる中、様々な中国企業と同様、アークも被災地に5000万人民元(日本円でおよそ8億1000万円)の寄付を行ったのだが、アークは寄付を行ったほかの多くの企業と異なる点があった。

アークは自社製品のスポーツウェアなど物資も寄付した

それは同社が2020年に37億円の赤字を計上し、2021年第一四半期も10億円の赤字で倒産の危機に陥っていたことだ。にもかかわらず、自社ホームページを使って寄付を行ったことを大々的に宣伝することはなく、同社が運営する「Weibo」の企業ページ上で、被災地への応援とともに寄付をしたメッセージ画像を載せただけだった。

それが功を奏したのか、「廃業危機なのに寄付をするのか」「この状況で寄付ができるなんて素晴らしい」「これぞ国民的企業だ!」など、インターネット上でユーザーから感動の声が次々と上がり、瞬く間に68万3000件の「いいね」が寄せられた。アークは一夜にして、一気に注目を集める企業となったのだ。

Weiboに投稿されたアークからのメッセージ

12万円が払えなかったのに…

アークが創業した2000年は、IT革命真っ只中で、ネットショッピング全盛期だった。「TO BE NO.1」というスローガンを掲げ、オリンピックのユニフォームにも採用されるなど順調に売り上げを伸ばしていた。

ところが近年は、「李寧」や「TBU」、「361度」といった新しいブランドの台頭により、その人気は陰りつつあった。

災害発生当時、アークは財務上の問題で株式売買が停止する可能性があるとも言われていた。ブランドの露出を増やすための宣伝広告費もなく、SNS「Weibo」の企業公式アカウントに公式ページを示す “V マーク”をつけられないほど資金がなかった(※)。そうしたことからも、8億1000万円にのぼる寄付が、いかに同社にとって大きな金額だったかがわかる。
(※)企業公式アカウントを取得するには年間1080ドル(約12万円)が必要

危機的状況の中で行われたアークの寄付活動が、テレビのニュースで取り上げられたことをきっかけに中国全土に広まると、たちまちアークを応援しようとするネットユーザーが登場し、様々な行動を起こし始めた。

まず、Weiboのアークアカウントを企業公式アカウントにしようと、ネットユーザーがおよそ120年分、金額にして1440万円分の公式認証権利を代理で購入した。

アークのネットショップでは、閲覧回数が190万回を記録し、コメント欄には「みんなで一番高い商品を買ってアークを応援しよう!」「何も考えずに商品を買ってあげよう」といった応援メッセージが書き込まれ、たった数日で数十億円を売り上げたという。

ところが、その様子を知った同社社長の吴荣光氏は、ライブ配信番組に登場し、感謝を伝えるとともに、「もし購入しようとしている商品があなたにとって必要のないものなら、応援していただくために買っていただく必要はありません。今はみんなで被災地のことを思い、災害に対して細心の注意を払いましょう」と伝えたため、さらに人気に火を付ける結果となった。

そもそも吴荣光氏は、今回初めて寄付を行ったわけではなく、2008年の汶川地震など過去の自然災害でも毎回、数億円規模の寄付を行っていた。自らが被災者になった経験もあり、その度、負けずに立ち上がってきたことから、いつも通りに寄付を行ったという。その姿勢に多くの中国人の心が動かされたと、中国メディアは伝えている。

Weiboの公式マーク取得のための宣伝費12万円をポンっと出せなかった会社が、8億円以上の寄付をしたことも賞賛を集めた理由のひとつかもしれない。

ネットショップでは1万足も売れている商品がずらり

中国人インフルエンサーの威力

現在、中国人インフルエンサーがアークの商品を自身のファッションに加え、新たな中国風ファッションを広めるなどし、同社の売り上げに貢献している。

こうして様々な人たちの手に渡ったアークの商品だが、手にとったことで初めて「アークの商品は良い商品だ」と気づいた中国人も多いという。若い世代には安くて地味だというイメージを持たれ、人気のなかったブランドが、今回の寄付によって一気に若者層を取り込んだだけでなく、世代を問わず誰からも愛される国民的ブランドになったというわけだ。

まるで中国版シンデレラストーリーだが、「人口が多い中国」、「SNSが浸透した現代社会」ならではの企業の復活劇だと言える。

日本には「栄枯盛衰」「一夜乞食・一夜大尽」という言葉もある。インフルエンサーたちの威力を認めつつも、逆の事態もあるのかと思うと少し怖い気もする。

Hello News編集部

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