相続トラブルの可能性
これからの相続に大きな影響を与えるかもしれない、「デジタル遺産」という言葉をご存知だろうか。
初めてデジタル遺産という言葉が世間に認知されたのは2003年のこと。ユネスコが「デジタル遺産は人類特有の知識や表現方法であり、テキスト、データベース、写真、ソフト、ウェブページなどネット上の個人情報を含めすべてデジタル遺産となる」と明示した。
具体的には、故人のパソコンやスマートフォンなどに残されたデータのことで、特に資産的価値のあるものを指す。身近なところでは、Suicaなどの交通ICカードにチャージされた残高や、電子マネーPayPayの残高、ゲームの有料アカウントなどがデジタル遺産にあたる。
デジタル遺産と呼ばれるものの一例
- ネットバンク口座
- ネット証券口座
- 仮想通貨
- 電子マネーのチャージ残高
税理士法人睦月の渡邉雄一さんによると、相続の取り扱いにはデジタル遺産についての記載はないものの、「ネットバンクの口座や仮想通貨、有料アカウントなどは、当然、相続税の対象にもなる」という。しかし、デジタル遺産の相続は、紙の契約書等がないので、所有者が亡くなってしまったら名義書換などのトラブルが起きる可能性もあると懸念する。
他にも、もし自分がネットバンクの口座を持っていることを誰にも教えずに亡くなってしまった場合、相続人がその口座の存在に気づけないと、ネットバンクによって口座自体が凍結されてしまう恐れがある。
発見できたとしても、相続税の申告期限である10ヶ月を過ぎていたら延滞税(※1)や過少申告加算税(※2)が発生してしまう。もしも遺産分割を終えてしまっていたら、相続人の間でデジタル遺産をめぐる再協議が必要となり、トラブルに発展する可能性もある。
(※1)納期限の翌日から2月を経過する日までは年「7.3%」、納期限の翌日から2月を経過した日以後は年「14.6%」が原則として利息に応じて加算される(条件により異なる)。
(※2)原則として追加納税額の10%が加算される(条件により異なる)。
相続人に共有する
デジタル遺産についての法整備が進んでいない今、私達にできることは、その存在を「見える化」することだろう。
ネット口座や仮想通貨を持っているか、ゲームなどの有料アカウントを持っているかを、家族など相続人に伝えておく、または遺言書やエンディングノートに記しておく等、生前のうちに対策を打っておく必要がありそうだ。
とはいえ私自身、どこにどんなデジタル遺産を持っているかをすべて把握しているかといえば、そうでもない。PayPay、Edy、Suica、楽天銀行、楽天証券、DMM Bitcoin、Tポイント、Amazon Prime、UNEXT、AppleMusic…、まだまだある気がする。
できるだけ早めにリスト化し家族に共有しておこうと改めて考えさせられた。
Hello News編集部 鈴木 規文
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